転職エージェントを利用していると、私たちが気づかないうちに知らない求人企業に「勝手に応募された…!」と驚く場面があるのです。ちょっと信じられないですよね。
転職エージェントに登録するとまずは担当のキャリアドバイザーと面談を行います。希望の求人条件や今までの実績をヒアリングされ、企業への求人応募の意思がある場合は履歴書や職務経歴書を提出します。
しかし、このときみなさんが希望していない求人企業に、キャリアアドバイザーが勝手に応募をしてしまうことがあるのです。にわかに信じがたいですよね。
本記事では「転職エージェントが勝手に応募」をしてしまった理由や、対応策などについて解説します。

「えっ、そんなことあるの!?」と、 おそらくみなさん驚くことでしょう。でもじつは私が以前勤務していた大手転職エージェントでもそのような事件が何回か発生していました。なかなか起こる事ではありませんが、念のためこのような事例もあるんだという認識をしておいて、万が一の時のため一緒に対策を押さえておきましょう。
転職エージェントが勝手に応募する4つの理由
ノルマ達成のプレッシャー
転職エージェントのビジネスモデルは、入社1件あたり採用企業から入社予定者の年収の30%を成功報酬として受け取る仕組みになっています。キャリアアドバイザーには応募数や内定率などの目標が設定され、それらの目標を稼ぐために求職者の最終確認なしで応募するケースがあるのです。

キャリアアドバイザーは結局は営業です。営業ですので売上やその他の数字目標が課せられます。そして数字に追われると焦りが生まれます。でも当然ですが、求職者の承認無しでの勝手に応募は絶対NGです。
クライアント企業の急募オーダー
「今週中に採用したい」という急ぎの要請を企業から受けると、求職者への意思確認をせずに応募手続きが進むことがあります。特にITや介護など慢性的に人手不足の業界で多発しているようです。そしてそのような急な依頼をしてきた求人企業が、俗にいうお得意様と呼ばれるような求人企業の場合に、勝手に応募することが起こっているようです。

私が以前勤務していた転職エージェントで、介護事業所がクライアントだったのですが、常に人手不足の業界なので、急募は当たり前。そうした流れで、求職者の承認無しで応募してしまった事例がありました。
求人企業のニーズを確認する
履歴書、職務経歴書のマスキング。このような言葉を聞いたことがありますか?このマスキングというのは、みなさんの書類に記載されている「お名前」「住所」「そのほか個人を特定できる情報」を隠す(マスキング)ことを言います。転職エージェントが、よりリアルな求人情報を聞き出すために、このマスキングされた応募書類を求人企業に送り、求人ニーズを確認することがあるのです。もちろんこれは、みなさんの許可が無い場合はNGです。

このケースは転職エージェントもダメですが、こんなことをさせてしまう求人企業もダメです。もしこのような話しを聞いたら、このような転職エージェント、求人企業とはぜったいに付き合わないことです。
コミュニケーションミス・情報共有不足
メールやチャットの曖昧なやり取りで、「応募OK」か「情報収集中」かの認識違いが生じることがあります。返信漏れやスレッドの混乱で、意図せず応募が確定するパターンです。また大手の転職エージェントではあまり無いケースですが、一部の転職エージェントでは口頭での確認だけということもありますので、そのようなやり取りをしている転職エージェントでは注意をした方がよいでしょう。

『検討します』と返信したつもりが応募合意と捉えられたことが。求職者のみなさんも言葉選びは慎重にするように気を付けてください!
勝手に応募されたときに起こりうるリスク
無断応募による信頼失墜
求職者の同意なく応募手続きを進められると、「自分の意志や希望が軽視された」と感じます。その結果、キャリアアドバイザーへの信頼が大きく揺らぎ、以降のサポートや連絡自体を拒否してしまうでしょう。しかしこのようなキャリアアドバイザー、および対応次第ではこの転職エージェントとはもう付き合わない方がよいでしょう。

みなさんにとっては時間の無駄と精神的な苦痛を味わったわけですから、クレームをいれておくべきでしょう。
企業との関係悪化?
本人の同意がなく応募されたにも関わらず、人事担当者に「そもそもこの人って、コミュニケーション能力に不安があるのでは」と受け止められる可能性もあります。まったく身に覚えのないことなのに、このようなとばっちりは勘弁願いたいところですよね。
精神的ストレスの増大
このように勝手に応募をされてしまうと、「誰にも相談できない」「自分でコントロールできない」という強い不安感に襲われます。その結果、転職活動へのモチベーションが低下し、最終的に優良求人のチャンスを逃してしまったり、長期間活動が停滞してしまうことも。メンタル面のケアが重要です。
事前に防ぐ!勝手に応募されないための3つの対策
応募ルールを明文化する
「応募前に必ず私の最終確認を取る」などルールを契約書やメールで明記する。

“言った・言わない”のトラブルを防ぐには、書面化が最も効果的です。「まさかこんなことが」という事が起こることがあります。その際みなさんを守ってくれるのも書面化なのです。
定期的な進捗確認と履歴管理
週1回の定例ミーティングやチャット通知で進捗を共有。チャット履歴を振り返ることで認識のずれを早期発見できます。

ToDoリストや履歴管理ツールを活用すると、透明性が高まり安心です。つねにコミュニケーションをとることで、お互いの齟齬もなくなるでしょうし、キャリアアドバイザーが勝手なことをしない抑止力にもなると思われます。
応募前「最終確認」テンプレートの活用
【最終確認】 ◯◯様 以下の求人について、応募を進めてよろしいでしょうか? – 企業名:●●株式会社 – 職種:△△ – 想定年収:X00万円 – 面接日程候補:候補日1、候補日2 ご確認よろしくお願いします。

このようなテンプレートを使えば、確認漏れを大きく減らせるはずですので、担当のキャリアアドバイザーに確認するとよいでしょう。
勝手に応募されてしまったときの具体的対処法
冷静に事実確認
応募先企業名、職種、面接日程など詳細を整理し、「いつ・誰が・どんな条件で応募したのか」をエージェントに確認。まずは状況を正確に把握しましょう。後からの交渉材料にもなります。
正式に抗議&条件の再確認を依頼
例文:「応募前にご連絡をいただく約束でしたが、確認がありませんでした。応募は撤回いただけますか?」ポイントは“約束違反”を指摘し、具体的アクションを求めることです。
キャリアアドバイザーの上司へ報告・相談
直接担当者と解決しにくい場合、上司やマネージャーに状況を説明。「担当者レベルでの改善が難しい場合がある」と伝えると、迅速な対応が期待できます。
セカンドオピニオンとして他社エージェントを活用
- 別のエージェントに同求人のセカンドオピニオンを依頼
- 応募経路を変えることで、条件交渉の余地が広がる場合も

エージェントは“選ぶ”もの。合わない相手には早めの見切りも大切です。
ケーススタディ:3つの実体験
事例A:40代・女性・ITエンジニア
状況:在宅勤務優先で求人を探し中
トラブル:希望と異なる大手SIerに勝手に応募されクレームを入れる
対応:応募撤回依頼→転職エージェントから求人企業への説明内容を共有してもらい、私自身の応募の意思がなかったことを説明→転職エージェント、および求人企業に個人情報の削除依頼とその実施報告の共有
事例B:30代・男性・製造業企画職
状況:年収アップ狙いで複数企業を検討中
トラブル:担当アドバイザーが相談なく応募
対応:担当アドバイザーの上司へ報告し正式に謝罪→その上司から何度かの今回の事象の説明と謝罪をされる→謝罪を受け入れ、別の担当アドバイザーに変更
事例C:50代・女性・介護職スタッフ
状況:介護経験を活かしマネジメント職を希望
トラブル:応募後に求人内容が旧情報のまま紹介され、条件面がまったく違っていた
対応:企業人事へ直接事情説明&謝罪→エージェント経由で内定辞退を報告。

このケースは勝手に応募されたわけでないのですが、たまにある事例なので紹介します。そして、トラブルが起きても、冷静に対応すれば軌道修正は可能です。まずは一歩踏み出しましょう。
まとめ
- 勝手に応募される背景を理解
- 事前ルール化&最終確認テンプレを用意
- トラブル発生時は事実確認→担当上司へ報告
- 信頼できない場合は他社エージェントに切り替え
まずは応募ルールをキャリアアドバイザーとすり合わせ、安心して転職活動を進めましょう。

あなたのキャリアはあなたのもの。後悔のない選択をサポートします!
【著者情報】くまさん(介護と転職のアドバイザー)
年齢 | 在籍期間 | 在籍企業 |
---|---|---|
22~34歳 | 10年 | 金融機関勤務(大手銀行、米系証券会社) |
35~45歳 | 10年 | 大手転職エージェント |
45~50歳 | 5年 | 介護系ベンチャー企業 |
50歳~ | 5年以上 | 独立して介護と仕事のコンサルタント |
年 | 主な出来事 | |
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1970年 | 0歳 | 神奈川県横浜市に生まれる。 |
1992年 | 22歳 | 大学卒業後、みずほ銀行に入行(法人営業担当)。 |
2000年 | 30歳 | 米系証券会社に転職し、主に債券を扱うトレーダーを行う。 |
2005年 | 35歳 | 大手転職エージェントにキャリアチェンジ(ミドル層の転職支援)。広告やプロモーション全部門の責任者となる。またキャリアアドバイザーとしての経験もあり、求職者のお気持ちに寄り添うカウンセリングを得意とした。 |
2015年 | 45歳 | IPO直前の介護ベンチャー企業に転職し、介護事業者の収益改善コンサルティングに従事。特養、訪問介護、通所介護、または有料老人ホームの経営や人事コンサルタント業務を行う。また、一般ユーザー向けには介護の相談窓口サービスを提供し、とくに仕事と介護の両立に悩む会社員をサポートしてきた。 |
2020年 | 50歳 | 独立し「Dr.介護と仕事のアドバイザー」として企業制度設計や講演、情報発信を開始。その流れで本ブログを執筆中。現在に至る。 |
No. | 得意分野 |
---|---|
1 | 介護と仕事の両立支援(一般ユーザー向け) |
2 | ミドル・シニア層(30代~50代)のキャリア再構築・転職支援(一般ユーザー向け) |
3 | 介護人材の採用・定着(介護事業者向け) |
4 | 介護事業者の経営支援(介護事業者向け) |
5 | ダイバーシティ経営(介護離職防止)(介護事業者向け) |
6 | 施設(老人ホーム)選びのアドバイス(一般ユーザー向け) |
7 | 50代以降のキャリア再デザイン(一般ユーザー向け) |
わたしのキャリアは少しユニークで、「金融」「転職エージェント」「介護コンサルタント」と様々な業界を経験してきました。ちょっと変わってますよね(笑)。
私の勤務していた転職エージェントは大手で、みなさんもよく知っている会社名だと思います。ここではあくまで中立な立場で転職支援をしたいので、社名は伏せさせて頂いています。転職サポートについては、プロ中のプロと自負しておりますので、みなさんのお仕事に関する悩みを解決します。