介護と仕事を両立しながら転職活動を行うケアラーの皆さん、または介護離職をして転職活動をする人、そして今の仕事が嫌になって転職活動を始めようとする方にとって、「転職エージェントを使ったらかえって時間を無駄にした」「担当者の連絡がしつこくてうざい」「信用できない対応をされた」という声が上がっていました。
本記事では、みなさんが感じた「信用できない」「使えない」「うざい」という3大ネガティブケースを具体的に解説。
その上で信頼できるエージェントを選ぶポイント、成功事例、ネガティブをチャンスに変えるテクニックをお伝えします。(読了時間5分)
①介護と仕事を両立しながら転職活動を行うケアラーの方
②介護離職をして転職活動をする方
③今の仕事が嫌になって転職活動を始めようとする方
転職エージェントが「使えない」「うざい」「信用できない」と感じる理由
理由① 担当者にノルマがあり、こちらのペースを無視して急かされる
転職エージェントは、企業から内定が出たときに成功報酬として転職者の年収の約30%を受け取るビジネスモデルを採用しています。そのため、キャリアアドバイザーにも「◯件決定しなければならない」というノルマが課せられ、みなさんの事情よりも「とにかく内定を出す」ことに注力しがちです。たとえば、「親の通院があるので面談は週1回しかできない」と伝えているにもかかわらず、「今週中に面接を入れたい」「いろいろ求人を見せるから来週までに書類を仕上げよう」と急かされ、心身ともに疲弊してしまうケースがあります。
理由② 紹介求人が限定的で、自分の希望とマッチしない
多くの転職エージェントでは、企業側から入社決定後に手数料をもらう仕組みのため、採用枠が大きい大手企業や有名企業の求人が多く、そしてそれらの求人案件を優先して紹介する傾向にあります。そして、みなさんが希望する「残業少なめ・時短勤務可」など条件に合った求人が少ないことがあります。たとえば介護離職後に、今までのキャリアとまったく違った営業職や接客業しか紹介されず、「福祉系の経験を活かしたい」「家から近い職場を探したい」という本来の希望から大きくズレてしまうケースも珍しくありません。結果として、「紹介求人が使えない」「時間だけ浪費した」という不満が生まれます。
理由③ コミュニケーションの齟齬・連絡が一方的すぎてストレスが溜まる
ケアラーの場合、親の介護スケジュールや突発的な介護対応が発生することから、連絡手段はメールやチャット、伝言でもOKとしてほしいのに、担当者から「電話で話しましょう」「面談に来てください」と一方的にコミュニケーション手段を指定されることがあります。さらに、夜遅くや休日に「面接候補を送りましたので、明日中に返信をお願いします」と催促されると、「仕事と介護の両立でいっぱいいっぱいなのに…」と強いストレスを感じます。
ネガティブケースを避ける!エージェント選びのポイント
ケアラー・介護離職者に理解のある転職エージェントを活用する
ケアラーや介護離職者に理解のあるエージェントは、介護と仕事の両立事情を理解しているアドバイザーが在籍しているため、交渉の際に「残業なし」「時短勤務」「フレックスタイム可」などの条件を直接企業に説明してくれます。例えば会社Aは「要介護者と同居・通院付き添い可」の求人特集を公開していて、ケアラーの就職支援実績も豊富です。また、会社Bは地方在住のケアラー向けにオンライン面談を重視し、隙間時間で登録・相談できる対応をしてくれます。このように理解のある転職エージェントは、ケアラーや介護離職者に理解のある求人企業を紹介してくれるのです。
エージェント選定時に確認すべき「12のチェックリスト」
- ケアラー経験のある、または理解のあるキャリアアドバイザーが在籍しているか
- 面談日時の柔軟性(平日昼/土日対応など)
- 企業側の介護両立制度への理解度
- 介護に理解のある求人の一覧を公開しているかどうか
- ケアラーへのサポート実績(成功事例件数・業界別実績)
- ケアラーの面接対策や履歴書添削コンテンツの充実度
- 担当者の引き継ぎ体制(途中で変わってもサポートが続くか)
- フリーランス向け・副業支援の有無(将来的な選択肢として)
- 無料相談会やウェビナーなどのフォロー機会
- 地域密着型求人の取り扱い(地方在住ケアラー向け)
- 登録前に年齢やブランクを相談できるか
口コミやSNSでも「実際の評判」を調べる
- ポジティブ・ネガティブ双方の声を確認する:「サービスA社 ケアラー 口コミ」「エージェントB社 うざい」など実際のキーワードで検索し、利用者のリアルな意見を集めましょう。
- 転職会議のようなレビューサイトも活用:匿名の口コミが多く掲載されているため、ストレスの原因や良い担当者の特徴などを把握できます。
- XやFacebookのハッシュタグ検索:「#ケアラー転職」「#介護離職転職」などで検索すると、同じ境遇の人たちの生のつぶやきが見つかることがあります。
実際にうまくいったケアラーの転職事例3選
事例① 半日勤務OKの総務職に転職成功したDさん(50代:要介護2の親と同居)
Dさんは、要介護2の親と同居しつつ、介護休暇を取りながら仕事を続けていました。しかし現職の総務部では「夕方に残業がある」「急な会議が多い」ため、通院付き添いが難しい日が続きました。そこでDさんはサービスA社に登録し、「送迎の付き添い可」「残業ゼロ」「週4日勤務可」という条件で求人を探してもらったところ、地元の中小企業から半日勤務を条件とした総務職の求人を紹介されました。アドバイザーが企業と直接交渉し、「親の送迎がある日は定時上がりを保証する」ことを約束してくれたため、Dさんは安心して転職を決断できました。
事例② リモートワーク主体の事務職に切り替えたEさん(40代:独居高齢者サポート経験あり)
Eさんは独居の親を近隣で支援しており、急な連絡にすぐ対応できるように在宅で働きたいと考えていました。しかし紹介された求人案件は「事務職は出社必須」というものがほとんどでした。そこでサービスB社にも相談してみると、リモートワーク主体の事務職求人を提案してくれました。面接では「介護経験者として、リモートでも速やかに業務連携ができる体制を作れる」という強みをアピール。結果、年収をほとんど下げずにリモート勤務主体の事務職として転職に成功しました。
ネガティブキーワードをチャンスに変えるテクニック
「使えない」「うざい」と感じたらすぐに切り替える判断基準
「面談を3回受けても求人がマッチしない」「連絡のレスポンスが悪すぎる」「担当者がこちらの事情を考慮してくれない」と感じたら、1つのエージェントに固執せず、以下の基準で乗り換えを検討しましょう。
- 最初の3回の面談で希望の求人紹介がない
- 連絡がメールではなく「電話だけ」で催促される日が続く
- 面談後、1週間以上返信がこない、または求人提案が雑で多すぎる
これらに当てはまる場合は、すぐに別のエージェントに登録し直す(または別のアドバイザーに変更してもらう)ことをおすすめします。
複数エージェントを併用するメリットと注意点
メリット
- 求人の母数が増え、選択肢の幅が広がる
- 担当者同士の比較ができ、「どちらのアドバイザーと相性が良いか」を判断しやすい
- それぞれのエージェントが持つ非公開求人にアクセスできる
注意点
- 登録するエージェントが多すぎると、「面談スケジュールの調整」が煩雑になり、かえってストレスに
- 担当者間で「すでに選考中の求人」を把握する必要がある(企業に二重でアプローチしないように注意)
- 複数登録する場合は、エージェント名・担当者名・連絡手段・進捗状況をエクセルなどにまとめて管理すると効率的
自分でもリサーチをして、主体的に転職市場を知る方法
- 求人サイトとの併用:「リクナビNEXT」「doda」「マイナビ転職」などでキーワード検索をし、自分の市場価値を把握
- 企業HPの直接応募情報をチェック:エージェント経由では出てこない「ダイレクトリクルーティング」や「リファラル採用」の情報を逃さない
- SNSや口コミサイトで業界情報を収集:「介護業界 口コミ」「残業なし 介護 企業名」などで実際の社員の声を確認し、企業リスクを減らす
まとめ~ケアラーだからこそ失敗しない「転職エージェント活用術」
本記事のおさらいと要点チェックリスト
- ネガティブ理由を把握:担当者のノルマ優先/求人のミスマッチ/コミュニケーションストレス
- エージェント選びのポイント:ケアラー特化・オンライン面談・企業交渉力・口コミ調査
- 成功事例:半日勤務OK/リモートワーク/介護業界内キャリアチェンジの3パターン
- チャンスに変える:3回見極める基準/複数併用するコツ/セルフリサーチで主体的に動く
最後に―転職は“人生の選択”であり、ケアラーの悩みは決してひとりではないこと
転職活動は、人生の大きな転機です。とくに介護と両立しながらの転職は「選ぶ企業」「担当者との相性」がその後の生活の安定に直結します。くまさんも、同じ境遇で悩むケアラーの皆さんを多く見てきました。だからこそ、完璧を求めず「自分の状況を素直に伝えること」「一度ミスマッチを感じたらすぐに切り替えること」が大切だと声を大にして伝えたいです。
これまでのネガティブな体験が、よりよい転職先と出会うきっかけになることを心から願っています。転職エージェントを上手に活用して、ご自身と大切な家族の両方を守りながら、新しい一歩を踏み出してくださいね。

ケアラーの方をはじめ転職活動を行う皆さん、ここまでお読みいただきありがとうございます。転職活動はゴールではなく、「自分と家族が安心して過ごせる新しいスタート」だと私は考えています。不安や迷いが出てきたら、いつでもこの記事を読み返して、紹介したエージェントやチェックリスト、成功事例を参考にしてみてください。みなさんの挑戦を心から応援しています。
【著者情報】くまさん(介護と転職のアドバイザー)
年齢 | 在籍期間 | 在籍企業 |
---|---|---|
22~34歳 | 10年 | 金融機関勤務(大手銀行、米系証券会社) |
35~45歳 | 10年 | 大手転職エージェント |
45~50歳 | 5年 | 介護系ベンチャー企業 |
50歳~ | 5年以上 | 独立して介護と仕事のコンサルタント |
年 | 主な出来事 | |
---|---|---|
1970年 | 0歳 | 神奈川県横浜市に生まれる。 |
1992年 | 22歳 | 大学卒業後、みずほ銀行に入行(法人営業担当)。 |
2000年 | 30歳 | 米系証券会社に転職し、主に債券を扱うトレーダーを行う。 |
2005年 | 35歳 | 大手転職エージェントにキャリアチェンジ(ミドル層の転職支援)。広告やプロモーション全部門の責任者となる。またキャリアアドバイザーとしての経験もあり、求職者のお気持ちに寄り添うカウンセリングを得意とした。 |
2015年 | 45歳 | IPO直前の介護ベンチャー企業に転職し、介護事業者の収益改善コンサルティングに従事。特養、訪問介護、通所介護、または有料老人ホームの経営や人事コンサルタント業務を行う。また、一般ユーザー向けには介護の相談窓口サービスを提供し、とくに仕事と介護の両立に悩む会社員をサポートしてきた。 |
2020年 | 50歳 | 独立し「Dr.介護と仕事のアドバイザー」として企業制度設計や講演、情報発信を開始。その流れで本ブログを執筆中。現在に至る。 |
No. | 得意分野 |
---|---|
1 | 介護と仕事の両立支援(一般ユーザー向け) |
2 | ミドル・シニア層(30代~50代)のキャリア再構築・転職支援(一般ユーザー向け) |
3 | 介護人材の採用・定着(介護事業者向け) |
4 | 介護事業者の経営支援(介護事業者向け) |
5 | ダイバーシティ経営(介護離職防止)(介護事業者向け) |
6 | 施設(老人ホーム)選びのアドバイス(一般ユーザー向け) |
7 | 50代以降のキャリア再デザイン(一般ユーザー向け) |
わたしのキャリアは少しユニークで、「金融」「転職エージェント」「介護コンサルタント」と様々な業界を経験してきました。ちょっと変わってますよね(笑)。
私の勤務していた転職エージェントは大手で、みなさんもよく知っている会社名だと思います。ここではあくまで中立な立場で転職支援をしたいので、社名は伏せさせて頂いています。転職サポートについては、プロ中のプロと自負しておりますので、みなさんのお仕事に関する悩みを解決します。
そして、元キャリアアドバイザーだからこそわかるみなさんの不信感。みなさんがそう思ってしまう、転職エージェントの内情などもお伝えしますね。