「退職したいことをどうしても上司に言い出しづらい。」「転職先の社名は言うべきなのでしょうか、あまり言いたくないのですが。」

こんにちわ、アドバイザーのくまさんです。私自身も銀行→外資→転職エージェント→介護と何回かの転職(退職)をしてきましたし、キャリアアドバイザーの時は多くの求職者の退職交渉をお手伝いしてきました。退職交渉でいちばん効果的なのが「(相手に対して)説得しない・議論しない」ことです。
退職交渉のポイントについて

それでは、私が大手転職エージェントでキャリアアドバイザーをしていた時のリアルな話しをさせてください。退職交渉について求職者の皆さんへ行っていたアドバイスを紹介します。
まずは「就業規則」を確認してください
退職願は退職日の何日前までに、誰に提出するか(就業規則上の退職届け出期間)を確認しましょう。その上でスケジュールをイメージしてください。
※法律上では「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法627条1項)」とありますが、就業規則にて退職届出日が定められている場合には、就業規則に従う方が良いでしょう。お世話になった会社に対して失礼のないようにすることが大事です。
念のため厚生労働省が示す「退職の申出は2週間前までに」と題した資料のリンクを貼っておきますので、ご興味ある方は参照ください。(出典:厚生労働省)
退職理由をしっかり整理し、直属の上司に口頭で伝えてください
退職希望日が決まっている場合、直属の上司にできるだけ早めに時間を作ってもらい、会議室など落ち着いて話せる場所で話を切り出しましょう。どうしても時間を作ってもらえない場合や上司が外出がちな場合には、まずはメール等で最初の報告を行ってください。いずれにしても、まずは上司へ報告をし、退職願については2回目以降の面談等に提出するようにしましょう。
※お酒の席で話をするのはやめましょう。感情的になり、話がこじれる場合があります
お世話になった上司に、感謝の気持ちを伝えながら話を切り出しましょう
上司へ退職の意向を報告する際に、「今までお世話になりありがとうございました」という感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。そして上司の顔を立てつつ誠意を持って話を切り出せば、意外とスムーズに話しは進むものです。
上司への報告は、上司の方の了承を得るのではなく、あくまで自分の気持ちは「退職は決定済み」といった内容で報告してください。たとえば切り出し方としては「○月末日にて退職させていただきたく思います。ご迷惑をお掛けしますが、業務の引継ぎスケジュールについてご相談させて頂けませんでしょうか」といったように、初回の報告の際に明確に退職希望日を伝えておくと良いでしょう。
上司や会社は慰留を求めます
みなさんが退職について切り出すと、多くのケースで上司や会社から慰留を求められます。もちろんこれはみなさんが優秀なので、このような提案を受けるのでしょうが、今は採用難の時代です。そえゆえに会社側としては、なるべく離職を抑えたいと思う傾向にあるのです。
「業務内容を変えてあげるよ」「年収アップを検討するから待って」などと言われるとつい考えが揺らいでしまうかもしれません。慰留を求められこのような提案が出ることもありますが、結果的にはそのような提案通りにならない事もあります。
上司のタイプや上司との関係性の深さにもよりますが、速やかに退職交渉を進めるためには「知人に誘われまして、話がまとまりました」「どうしてもやりたいことがありまして転職をすることにしました」といった理由で、誠意を込めて伝えるようにしてください
また、今回の退職が転職を伴う場合(ほとんどがこのケースだと思われます)には、基本的には転職先の会社名は言わない方が無難だと思われます。過去に、転職先がたまたまその会社の取引先であったためトラブルになった事例もあります。「社名は申しづらいのですが、某○○系企業です」といった程度に濁した方が無難です。
短期間で退職日を確定したい時は、意思が固い姿勢を見せ続けましょう
みなさんが優秀であればあるほど、上司は何回かみなさんの翻意を試みるものと思われます。そこで重要なのは、上司から慰留のための様々な提案があったとして興味を示さず、「慰留しても気持ちが変わりそうも無いな」と思わせることが重要です。
上司が一生懸命に話しをしてくれてるので、つい申し訳ない気持ちになって慰留条件に耳を傾けたりすると期待を持たれてしまいます。そしてその分、退職日の確定までに時間がかかってしまいます。退職日確定が遅くなると引継ぎ期間が短くなり、ご自身の業務がきつくなりますし、後任の方にも迷惑をかけてしまいます。
お世話になった会社に迷惑をかけないためにも、みなさん自身の意向を明確に示すことが大切なのです。
面談で話が平行線になった場合は、一旦返答を持ち帰ってください
上司との退職交渉は、ときに1~2回ではまとまらないことがあります。「このままでは結論が出ないし、話しが進まない」と感じたときは、いったん上司の顔を立てて「それではもう一日考えさせてください」と言って返答を持ち帰ってください。できれば週末などが良いでしょう。翌日、または週明けに「よくよく考えましたが、やはり退職の意思は変わりません」と伝えることで、さすがに上司も諦めてくれるはずですし、必要以上の遺留は法令上も出来ないことを知っているはずですので、退職を承認してくれるはずです。
業務引継ぎ資料を作成してください
退職が承認されたら、すぐに会社(または後任の方)に対して失礼のないように引継ぎ資料を作成してください。みなさんが今までやってきた業務概要とその内容、今取り掛かっている業務概要とその内容、そしてその業務の難易度と業務にかかる時間等を明記すると良いでしょう。そして今の業務をたとえば何曜日の何時から何時まで行っている、等の勤怠スケジュールを併記するのも親切で良いでしょう。
そしてその資料をもとに、上司の方から確認や相談がある場合には、きちんと話し合ってください。
必ず記録を残してください
退職が口頭承認されましたら、あらためて正式書類として退職届を提出します。そして今までの経緯を個人用のメモとして残しておいてください。確定した退職日、承認者(いつ、誰と、どこで、どのような話しをしたか)等をメモとして記録しておきましょう。また、退職に際してのメールのやり取りは必ず保存するようにしてください。
転職エージェントに退職交渉を相談
内定が出ていざ退職交渉をするときには、いろいろと不安もあるでしょうし、それらの悩みについても転職エージェントが相談にのってくれます。
私が転職エージェントにいたときには、上述したように退職交渉についてのアドバイスをしていました。ご紹介できたものはほんの一部分になりますが、みなさんの悩みや不安もそれぞれだと思われます。
転職エージェントを利用して転職活動をしたみなさんは、ぜひ担当のキャリアアドバイザーにいろいろと相談してみると良いでしょう。退職交渉の方法について相談に乗ってくれる転職エージェントはいろいろありますが、アドバイスに定評がある転職エージェントを紹介します。
マイナビエージェント(会うを大事にする転職エージェント)
- 特徴:マイナビグループの知名度の高さがあり、就活学生には圧倒的にナンバー1の支持をされている。
- 強みポイント:数年前までは20代と30代を中心とした転職支援に強みがあったが、最近はミドル層からも評価されている。
- おすすめ対象:以前より「会う」「聞く」といったキーワードをサービスコンセプトとしており、求職者に寄り添う姿勢は転職エージェントのなかでも上位に入る。
リクルートエージェント(未経験OKな求人が豊富)
求人数約20万件(公開求人のみ)と国内トップ。業界未経験OKの求人を多数保有しており、転職成功者は年間約50,000名。地方拠点が全国に18カ所あるため、地方在住でもサポートを受けやすい。
doda(デューダ)(都市圏だけでなく地方求人にも強み)
地方優良企業とのパイプが強固で、大都市圏はもちろんのこと、特に東北・北陸・九州エリアでの求人が豊富。キャリアアドバイザーが現地企業の人事担当と定期的に情報交換を行っているため、「地元企業の雰囲気」をリアルに把握した上で紹介してくれる。
内定→退職交渉→入社までのスケジュール
みなさんが面接に合格して内定を獲得した後、入社までの大まかなスケジュールになります。全体の流れを、大枠で良いので把握しておくと良いでしょう。
ステップ | 内容 |
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内定 | 求人企業から内定の通知をいただきます。 |
内定承諾(内定から3日~1週間以内) | 内定承諾後に、退職交渉を考え始めます。 |
退職交渉開始(1週間程度で完了) | ・上司とのアポイント調整 ・上司への報告 |
退職交渉におけるトラブル事例 | ①確認をおろそかにし長期化(次章参照) ②引き留めに疲れて残留へ(次章参照) |
退職日確定 | 上司・人事との調整を経て正式決定 |
入社日確定 | 内定先と入社日の最終確認 |
入社手続き開始 | 新しい企業と簡易的な事務手続きが始まる |
退職準備 | 社内への挨拶などをはじめる |
入社直前メール/挨拶 | 新しい企業への挨拶メールを送る |
入社 | 新しい職場へ着任 |
上記のスケジュールについて、おおよそ1か月半から2か月をかけて進捗するペースが現実的と思われます。
退職交渉;よくあるトラブル事例

続いて、私がキャリアアドバイザーをしていた時に見かけた、退職交渉に際してのトラブル事例になります。とくによくあった2つの事例を紹介します。
受身の退職交渉で長期化
内定承諾後、取り急ぎ直属の上司に退職の意を伝えた。
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「私の方から、部長や人事には言っておくので、今後について指示があるまで待っていて。」と上司から告げられ、上司から声掛けされるのをずっと待っていた。上司が手続きを進めてくれるものであると信じて期待して待っていた。
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1週間経っても上司から何も声掛けがなく不安な気持ちになり始めるも、その後さらに1週間経っても音沙汰が無かった。
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さすがに痺れを切らして上司に問い合わせたところ、退職の意は直属の上司のところで止まっており、部長にすら話しが通っておらず、無駄な2週間という時間が経過しただけであった。
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内定承諾した企業の入社手続きが間に合わず、当初の希望日での入社が難しくなって、内定企業に無理を言って入社日を1ヶ月後倒しで調整してもらった。

このようなケースを避けるためにも、ある程度の時間が経った際には、直接その後の進捗について確認するようにした方が良いでしょう。
引き留めに疲れて現職残留
内定承諾後、取り急ぎ上司、部長、人事に退職の意を伝えた。
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部長面談、人事面談が実施され、社内に「あいつが辞めるらしい」という噂がすぐさま広がった。
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お世話になった先輩、同僚、同期、関係先のお客様から、次々に引き留めの連絡が入った。(飲みに誘われる、社内メールが届く、LINEなど個人的なメッセージが届くこともあった)
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引き留めの都度、退職したい意向を伝え続けてきたが、様々な方面からの引き留めの力が強く、ついには心が折れて現職残留の気持ちが固まってしまった。
「こんなに自分のことを思ってくれる会社だったのか・・・」「こんなに良い人間関係の中で仕事が出来ていたのか・・・」と、情にほだされてしまった。
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内定承諾した企業に対し、入社前辞退の意向を伝えた。

このケースも多いパターンです。結果的に現職残留が良い場合もあります。しかし、最終的は判断は、みなさん自身が気持ちを整理して、まわりの意見に惑わされずに決めることが一番です。
タイプ別にみる上司への退職交渉
それではここで上司のタイプ別の報告の仕方、対応の仕方についても解説しましょう。あくまで参考としてみてください。
1)攻撃型タイプの上司の場合
- 「迷惑だ!」「今辞められたら、まわりにどれだけ迷惑が掛かると思ってる」→「ご迷惑をおかけし、本当に申し訳ありません。勝手なことを申しますが、どうしても次に進みたいので、今後の手続きと引継ぎの相談をお願いします。」「たしかにご迷惑になるかもしれませんが、どうぞ◯月末での退職をご承認ください。後任への引継ぎは滞りのないように責任を持って最後まで対応します。」
2)人情型タイプの上司の場合
- 「こっちも大変なので、事情は分かるけどせめて半年残ってくれないか」「次の担当が異動してくるまで待ってもらえると助かるんだけど」→「申し訳ありません。限られた日数になってしまいますが、出来るかぎりの対応は致しますし、引継ぎ資料についても、抜けもれのないように詳細に作成させて頂きます。」
3)問題解決型タイプの上司の場合
- 「不満は何?今の業務が合わないなら改善するし、異動も考えるよ」→「現職の不満はとくにありません。どうしても次のステージでやってみたいことが出来たのですみません。退職の意思は変わりませんので、どうか今後の段取りについての相談をお願いします。」
4)詰問型(ex.社名を迫る等)タイプの上司の場合
- 「辞めるんだ、いつ?ちなみにどこに行くの?」→「すみませんが今は社名は控えさせてください。◯◯業界の◯◯職です。また時期を見てお話しさせて頂きますのでご了承ください」

タイプは違えど共通するポイントは、「短く・断定的に・感謝を添える」ことを意識して対応することです。余計な説明は火種にもなりますので要注意です。
まとめ;退職交渉におけるポイント
- 退職日×入社日をセットで告げる(両方言うとGOOD)
- 説得しない・説得されない・議論しない(泥沼回避)
- 退職理由は深掘りしない(改善提案に吸い寄せられない)
- 転職先は明かさない(情報拡散や介入のリスク、慰留のネタになる可能性あり)
- 冒頭と最後に“感謝”を置く(関係を丁寧に閉じる)
【著者情報】くまさん(介護と転職のアドバイザー)
年齢 | 在籍期間 | 在籍企業 |
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22~34歳 | 10年 | 金融機関勤務(大手銀行→米系証券会社) |
35~45歳 | 10年 | 大手転職エージェント(国内大手→外資系大手) |
45~50歳 | 5年 | 介護系ベンチャー企業(IPOを達成) |
50歳~ | 5年以上 | 独立して介護と仕事のコンサルタント |
年 | 主な出来事 | |
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1970年 | 0歳 | 神奈川県横浜市に生まれる。 |
1992年 | 22歳 | 大学卒業後、みずほ銀行に入行(法人営業担当)。 |
2000年 | 30歳 | 米系証券会社に転職し、主に株式と債券を扱うトレーダーを行う。 |
2005年 | 35歳 | 大手転職エージェントにキャリアチェンジ。キャリアアドバイザーとして求職者のお気持ちに寄り添うカウンセリングを得意とした(ミドル層の転職支援が得意)。国内大手と外資系大手の2社でアドバイザーを経験。 |
2015年 | 45歳 | IPO直前の介護ベンチャー企業に転職し、介護事業者の収益改善コンサルティングに従事。有料老人ホームの経営や人事コンサルタント業務を行う。また、一般ユーザー向けには介護の相談窓口サービスを提供し、とくに仕事と介護の両立に悩む会社員をサポートしてきた。 |
2020年 | 50歳 | 独立し「Dr.介護と仕事のアドバイザー」として人事制度設計や講演、情報発信を開始。その流れで本ブログを執筆中。現在に至る。 |
No. | 得意分野 |
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1 | 介護と仕事の両立支援(一般ユーザー向け) |
2 | ミドル・シニア層(30代~50代)のキャリア再構築・転職支援(一般ユーザー向け) |
3 | 介護人材の採用・定着(介護事業者向け) |
4 | 介護事業者の経営支援(介護事業者向け) |
5 | ダイバーシティ経営(介護離職防止)(介護事業者向け) |
6 | 施設(老人ホーム)選びのアドバイス(一般ユーザー向け) |
7 | 50代以降のキャリア再デザイン(一般ユーザー向け) |