その就職活動は正しいですか?新卒からジョブ型の時代の到来か!

Dr.キャリアアドバイザー

みなさんにとっては遠い昔の話しでしょうが、1990年の半ばに私の知り合いの先輩が大手証券会社に就職をしました。その会社の名前は「山一證券」です。

 

当時の日本国内では「四大証券」という言葉があり、その四社の証券会社を大手証券会社と呼んでいました。

 

売上げ規模の順番で言うと、野村證券、大和証券、日興證券、そして山一證券でした。

 

証券会社の数は全国で約300社程度あり、業界5番手の国際証券、新日本証券、勧角証券、和光証券などが準大手証券会社と呼ばれ、このあたりまでが大手証券会社と呼ばれていました。

 

つまり山一證券は証券業界のエリートのような存在だったのです。

 

先輩の会社選びのポイントは「人気ランキングに入っている会社だったから」という事が一番だったそうです。

 

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しかし先輩が山一證券に入社してわずか2年足らずで自主廃業をしてしまいました。不正会計(損失隠し)事件後の1997年のことです。

 

このように考えると「就職人気ランキングで見かけた会社だから」という理由での会社選びはとても危険かもしれません。

 

そこで今回は「みなさんの就職活動は正しいですか?」をテーマに、私たち社会人と就活学生の視線の違いなどについて紹介していきます。

 

 

就活人気ランキング企業の今後について

 

Dr.キャリアアドバイザー

私の先輩は「就職人気ランキング」でランクインしていたから、という理由で就職先を決めました。またある先輩は銀行の中の銀行という理由で日本興業銀行に入行しました。もちろん今でも存続していますが、みずほ銀行と名前を変えてしまいました。

 

このようにその時は人気の会社であっても、将来どのようになるかは全く分からないですよね。

 

これは仕方ないことですし、誰にも分からない事かもしれません。

 

それでは今から約10年前の「2013年の就活人気企業ランキング」を見て、今それらの人気企業がどのようになっているのかを検証してみましょう。

 

2013年人気企業ランキング

1位 JTB
2位 三菱東京UFJ銀行
3位 オリエンタルランド
4位 伊藤忠商事
5位 旭化成ホームズ
6位 みずほフィナンシャルグループ
7位 電通
8位 ソニーミュージックグループ
9位 三井住友銀行
10位 ロッテ

参照サイト:学情

 

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このランキングは2013年就活人気ランキング企業です。正直このランキングには驚きました。

えっ、どういうことですか?たしかに新型コロナウィルスの影響で、一時的に業績が悪化している会社もありますが、それでもこれらの人気企業は今でも頑張っていますよね。

A君(20代会社員)

Dr.キャリアアドバイザー

私が驚いたのは、銀行が3社もランクインしている事なのです。2013年という時代背景を考えたら、この人気ランキングが社会人の私たちには違和感を感じさせるのです。

 

もう少し詳細に説明します。

 

一般的に言いますと、景気が良い時期には金利が高く、景気が悪い時期には金利が低く設定(誘導)されます。

 

そして銀行の収益は「預金金利」と「貸出金利」の利ザヤによるところが大きいのですが、金利が高い時ほど収益が上がる傾向にあります。

 

それでは2013年前後での金利動向はどのようになっていたのでしょう。

 

【日本の超低金利政策について】

1990年以降のバブル景気崩壊の頃より、景気悪化を食い止めるため金利は下落傾向になります。

10年間で下落が続いた金利は、ついに1999年に異常事態とも言える「ゼロ金利政策」が導入されました。その後も2000年代のITバブル崩壊と2008年のリーマンショックによりゼロ金利政策の導入を実施しています。

つまり1990年以降約40年間にも及ぶ長い期間において、日本は低金利時代を過ごしてきたのです。

そしてこのような時代に「銀行を選ぶ」のはかなりリスクが高いと感じるので、先の「2013年人気企業ランキング」には違和感を感じたのです。

 

Dr.キャリアアドバイザー

超低金利時代の真っ只中。そんな時代に敢えて銀行が人気と言うのには、どうしても違和感を感じてしまうのです。ちなみに最近では地方銀行の業績が軒並み悪化しており、地方銀行の再編が騒がれています。

 

それでは参考に2021年最新の「就活学生の人気企業ランキング」を見てみましょう。

 

2021年人気企業ランキング

1位 伊藤忠商事
2位 JTB
3位 味の素
4位 丸紅
5位 エイチ・アイ・エス(H.I.S.)
6位 アサヒ飲料
7位 資生堂
8位 大日本印刷(DNP)
9位 任天堂
10位 オリエンタルランド

参照サイト:学情

 

Dr.キャリアアドバイザー

2021年の最新人気ランキングを見てみますと、さすがに銀行はベスト10にはランクインしていないようです。やはり最近の業績や将来性に対して不安になったのでしょうか。また新型コロナウィルスの影響で、来年以降にJTBやH.I.S.がどのような順位になっているのかは気になるところです。しかし世間的には「GAFA」や「BAT」が叫ばれている中で、それに該当する日本企業が無いのは寂しいことですね。

 

学生のみなさんにあらためてご理解頂きたい事は、このように10年もの長い月日が流れると各社の業績も変化します。

 

そこで私が言いたいのは多くの就活学生は大丈夫だとは思いますが、人気ランキングに左右されることなく自分の考えで会社選びをする事を一番に考えてください。

 

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就活学生と投資家の目線の違い

 

Dr.キャリアアドバイザー

就活学生と投資家の目線の違い。これはどちらが正しくて、どちらが間違いという事ではありません。あくまで目線が違うという事を紹介したく思います。私も元々は外資系証券に勤めていましたので、会社選びの基準の違いを感じております。

 

ここで大学3年生(2022年3月卒業予定)に対しての就職意識調査を見ていきましょう。

 

就活学生が選ぶ人気業界ランキング

順位 業界 割合(%)
1位 情報・インターネットサービス 18.8
2位 情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト 16.4
3位 建設・住宅・不動産 15.9
4位 銀行 15.6
5位 水産・食品 15.2

参照:キャリタス就活2022(ディスコ)

 

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就職先企業を選ぶ際に重視する点を選んでもらいました。最近のSDGsの浸透などにより、「社会貢献度が高い」ことを選択理由にあげる学生も増えているようです。

 

就職先企業を選ぶ際に重視する点

会社選びで重視すること 割合(%)
将来性がある 49.7% 
給与・待遇が良い 41.2%
福利厚生が充実している 31.5%
社会貢献度が高い 28.4%
職場の雰囲気が良い 28.4%
業績・財務状況が良い 26.3%
休日・休暇が多い 22.7%
大企業である 20.4%
仕事内容が魅力的 20.2%
有名企業である 19.7%

 

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会社を選ぶ時に重視するポイントの第1位は「将来性」でした。

 

そして「将来性」を計る一番の指標といえば「株価」でしょう。

 

「株を買う」という事は「会社の将来性を買う」ことなのです。

 

そしてその将来性を評価する指標が、株価と連動している「PER」と「PBR」なのです。

 

Dr.キャリアアドバイザー

上記が就活学生に人気の業界ランキングです。このランキングを今度は「投資家目線」で評価してみましょう。その前に投資家の評価指標である「PER」「PBR」に対して説明をします。

 

「PER(株価収益率)」企業の利益水準から今の株価が適正水準かどうか判断する指標

 

「PBR(株価純資産倍率)」企業の資産価値から今の株価が適正水準かどうか判断する指標

 

人気ランキングとPERの比較

順位 業界 PER(倍)
1位 情報・インターネットサービス 41.3
2位 情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト 31.4
3位 建設・住宅・不動産 10.8
4位 銀行 5.1
5位 水産・食品 32.2

*2021年2月1日時点でのPER

Dr.キャリアアドバイザー

PERで比較をしてみました。PERが高いという事はそれだけ「投資家の期待が高い」、つまり将来性が有るとして買われている銘柄になります。たとえば銀行を見てみると明らかにPERが低くなっています。

 

2020年末の上場企業の全平均PERが「19.5倍」でしたので、明らかに銀行は全業種で見て期待値が低いとも言えます。

 

また「建設・住宅・不動産」も同じく全業種平均より低いので、投資家から見ると将来に対する期待値が低いと言えます。

 

人気ランキングとPBRの比較

順位 業界 PBR(倍)
1位 情報・インターネットサービス 4.8
2位 情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト 3.8
3位 建設・住宅・不動産 1.0
4位 銀行 0.3
5位 水産・食品 1.7

*2021年2月1日時点でのPBR

Dr.キャリアアドバイザー

全業界でのPBRの平均は1.4倍です。やはり株価、つまり投資家の期待値は「建設・住宅・不動産」「銀行」がかなり低いと考えているようです。しかしこのような就活学生と投資家の「マインドの差」はどこから生まれているのでしょうか。

 

就活学生が選ぶ人気業界と投資家が評価する業界には差があるようです。

 

このように書くと「就活学生は実社会を分かっていない!」などと横暴な意見も出そうですが、私自身は決してそうは思いません。

 

Dr.キャリアアドバイザー

みなさんは世界的な著名な投資家「ウォーレン・バフェット」をご存じでしょうか。そのバフェットが2020年に日本の総合商社の株を大量に買った事がニュースになりました。

 

商社株のPERは「11.2倍」、PBRは「1倍」とPER・PBRともに全業界平均を下回っています。

 

バフェットと比べたら日本の機関投資家など赤子同然ですが、そのバフェットが商社株を買っているのです。

 

「就活学生とウォーレン・バフェット」対「投資家」、どちらに先見性があるのでしょうか。

 

Dr.キャリアアドバイザー

私が一番言いたいこと。それは会社選びで重要な事は、人気企業ランキング等に頼るのではなく、自分自身の考えで将来を選択することなのです。そうすれば将来どのような事が起こっても後悔することが無いはずです。

 

【計算式】

「PER(株価収益率)」=株価÷1株あたり利益

 

「PBR(株価純資産倍率)」=株価÷1株あたり純資産額

新卒からジョブ型雇用が始まる!?

 

「会社選びで一番重要な事は、自分自身の考えで将来を選択する事」と言いました。

 

自分自身で決める事で、将来もし入社した会社や業界の雲行きが怪しくなったとしても、自分が決めた道なので後悔はしないでしょう。

 

Dr.キャリアアドバイザー

そしてもう一つ。人気ランキング等に頼らず自分自身で将来を選択せざるを得ない状況が想定されるのです。それが新卒採用にも波及するかもしれないジョブ型雇用なのです。

 

ジョブ型とは、職務を明確にした上でそこに最適な人材をアサインするやり方です。

 

欧米の働き方と日本の働き方の最大の違い、それは欧米型が「成果主義(ジョブ型)」によるものに対して日本型が「時間主義(メンバーシップ型)」と言う点でしょう。

 

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Dr.キャリアアドバイザー

簡単にジョブ型の特徴を以下の表にまとめました。新型コロナウィルスの影響で各社の業績格差が広がっていて、脱横並びの流れが強まっています。そのひとつとしてジョブ型雇用の推進が高まりそうなのです。

 

ジョブ型雇用の特徴について

概要 職務を明確にする
業務 専門的
評価 実績による評価
人材採用 最適な人材
人材流動性 高い

 

そして経団連は「従来の画一的な日本型雇用慣行の限界が顕在化している」とコメントしています。

 

年功序列ではなく職責や成果で評価する仕組みで、専門性を活かして働く環境を整えようとしているのです。

 

現在は主に「管理職」や「中途採用」でジョブ型が広がりつつありますが、経団連は「今後はジョブ型を新卒から取り入れるように」と呼びかけているのです。

 

このような働き方が主流になっていくとしたらそれこそ実力がすべての社会、つまり「自分の人生を人気ランキングで決めるなんて出来なくなる」のです。

 

Dr.キャリアアドバイザー

このような理由から自分自身の考えで将来を決めることが重要という事がお分かりになったのではないでしょうか。