Dr.キャリアアドバイザー
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。
近年投資の世界では、このESG(環境・社会・企業統治)が脚光を浴びています。
少し前の投資の世界では、「短期的な利益の追求」や「株主還元」といったキーワードが重視されていました。
しかしここ数年で完全に流れは変わりました。
機関投資家のなかでも、短期的な利益追求よりも長期的な繁栄を求め始めたのです。
そしてこのような投資家の動きが、ゆくゆくはみなさんの仕事にも関係してくるのです。
今日は元トレーダーの目線から、これからの就業環境を予想してみます。
ESG投資が私たちの仕事に何の関係が?
A君(20代会社員)
Dr.キャリアアドバイザー
世界の投資家がESG銘柄への関心を高めています。
「グリーディー」と揶揄されていたウォール街の金満家たちも、今ではこのSDGsに注目しています。
ここ数年、国連主導でSDGsが見直されその考えが少しづつ浸透し始め、今では機関投資家も無視出来ない注目のキーワードになっています。
それまで短期的な利益を追求していた投資家が、投資先の長期的な成長を重視するようになり始めたのです。
とくに中長期投資を重視している米国の年金運用資金などが、売上げ・利益といった財務諸表では測れない指標に着目し始めたのです。
またこのようなムーブメントは機関投資家だけのものでなく、一般の消費者にも拡がりを見せ始めています。
一般消費者の意識の変化
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つまりESGを重視する企業は今後も成長が見込め、会社の寿命も伸びることが期待出来ます。
そしてこのような会社に勤める人たちの会社員寿命も当然伸びて行く事となるのです。
投資先のCO2排出量を減らす
Bさん
第一生命が2025年までに、投資先の企業の二酸化炭素排出量を2020年対比で約3割減らす計画を実行しようとしています。
これは一体全体どういう事なのでしょう。
これは投資先企業のなかで、とくに二酸化炭素排出が多い企業の株式を売却して行くというものなのです。
投資を受けている会社にとっては、生保のような大手機関投資家から資金を引き揚げられたら溜りません。
大手機関投資家から資金を引き揚げられたら、「会社存続の危機」や「買収の危機」の憂き目にあいます。
投資を受けている会社は、それまでの製造プロセスなどを全面的に見直し、かつ今までの会社方針を根本から変えなければならない一大事なのです。
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第一生命の投資ポリシーについて
国内でこのような二酸化炭素削減目標を掲げたのは第一生命が初めてで、機関投資家のこのような動きはやはり欧米が先行しています。
会社 | 目標 |
---|---|
アクサ | 投資先の二酸化炭素排出量を2025年に2割削減 |
アリアンツ | 投資先の二酸化炭素排出量を2050年に実質ゼロに |
このように機関投資家は二酸化炭素の削減目標を設定し、投資先の企業には脱炭素を促進し目標達成を目指します。
このような流れから、今後は環境時術に注力している企業への投資が高まり、成長が加速的に早まる可能性が高いと言えるでしょう。
21世紀型の会社を選ぼう
これから成長していく会社は、間違いなく「ESG」を意識した会社になるでしょう。
とくに注目のキーワードは「脱炭素」。
脱炭素経営はこれからの時代を生き抜く会社にとって「出来る・出来ない」といった問題ではなく、「やるしかない」テーマになって行くのです。
ここであらためましてESGについて簡単に勉強してみましょう。
ESGについて
ESGが初めて認知されたのは、2006年に国連事務総長アナン氏(当時)が投資判断の新たな基準として「ESG」を取り上げたことがキッカケでした。
ここから投資判断の基準としてESGが意識し始められ、それに伴い各企業もESGに取り組まないといけないといった風潮が生まれたのです。
そしてESGはその後も発展を続けて、これらの「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」に対する取り組みは一時的なものでなく、持続可能でなければならないと考えられるようになります。
環境・社会・経済などを将来にわたって適切に維持・発展することを意味する「持続可能性(サステナビリティ)」への関心の高まり、「SDGs」へと繋がっていったのです。
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しかしそれまで「株主利益」「短期での利益還元」が騒がれていたグローバル経済ですが、なぜこのような180度の転換が起こったのでしょう。
「ESG」「SDGs」が見直されるようになった要因は「環境汚染」や「不平等」「貧困」など多々ありますが、ここで忘れてはならないキッカケの一つを紹介します。
約1億人の子どもが3ドルを稼ぐため1日12時間の重労働
世界には約1億人の子どもが3ドルのために1日12時間の重労働を課せられていました。
3ドルのために12時間の重労働。
しかもそれを幼い子供が行っていたとしたなら。
おそらく多くのみなさんは、激しい嫌悪感を覚えるのではないでしょうか。
そしてさらに、この子供たちの仕事が「普段私たちが喜んで着ていた服や靴」と知ったとき、おそらく多くの人が著しい自己嫌悪に陥るのではないでしょうか。
そのような悲惨な事が、つい最近まで行われていたのです。
NIKE、サッカーボールを手縫い
1997年、NIKEがサッカーボールを幼い子供に手縫いをさせていた事が発覚しました。
アメリカの有名雑誌「LIFE」にパキスタンの子供たちがNIKEサッカーボールを手縫いする写真が掲載され、「児童労働」という言葉とともに注目されました。
その工場では、児童が1個のサッカーボールを作り上げるために、「32枚の革の布」を「1,600回縫いあげて」いたのです。
そしてこの単純作業を1日12時間続けて、そしてこの過酷労働の報酬として得られる収入は1日たったの3ドル。
これはまさしく「児童虐待」と言える事件でしょう。
この事件が明るみになったことで、NIKEに対して世界的な不買運動が起こり遂に謝罪をする事となりました。
H&M、ファッションの奴隷たち
スウェーデンの世界的な人気ファストファッションブランド「H&M」。
日本でも有名なファストファッション・ブランドですよね。
そしてこのH&Mが、ミャンマーで14歳の児童に対して過重労働をさせていたと告発されたのです。
ある女の子は1日3ドルで1日12時間以上働き、ある他の女の子はナント11歳からこの工場で働いていたとのことです。
長時間及び夜間労働は不法であると指摘され、謝罪とともに対応措置を取ることになりました。
Dr.キャリアアドバイザー
このような事を二度と起こさないようにと、ESGに賛同する消費者が爆発的に増えて行ったのです。
こんな現代の奴隷制度のような事が許されて良いはずがありません。
これからますますESGは重視されていくでしょうから、今後もしこのような事を起こしたら企業にとっては取り返しのつかない大ダメージになるでしょう。
しかしそれでもまだまだ企業によって、その取り組みについては温度差があるようです。
今の時代、そしてこれからの時代に「ESG」「SDGs」を意識出来ない企業は生き残りは難しいでしょう。
そのような点からも、今後みなさんが会社選びをする際には「ESG」「SDGs」に積極的に取り組んでいる会社に就職・転職するべきなのです。
それではビジネスパーソンが選んだ「ESG」に積極的に取り組む企業ランキングを紹介します。
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参照データ:日経企業イメージ調査
社会貢献(Social)が高い企業ランキング
社会貢献企業ランキング
1位 | トヨタ自動車 |
2位 | 日本コカ・コーラ |
3位 | ファーストリテイリング |
4位 | オリエンタルランド |
5位 | グーグル |
6位 | 味の素 |
7位 | サントリー |
8位 | 東日本旅客鉄道 |
9位 | ミズノ |
10位 | 伊藤忠商事 |
企業統治(Governance)がしっかりした企業ランキング
企業統治企業ランキング
1位 | トヨタ自動車 |
2位 | 三井住友銀行 |
3位 | サントリー |
4位 | 伊藤忠商事 |
5位 | アサヒビール |
6位 | 三菱UFJ銀行 |
7位 | 三菱地所 |
8位 | 任天堂 |
9位 | 三井物産 |
10位 | 三菱商事 |
地球環境(Environment)の意識が高い企業ランキング
地球環境企業ランキング
1位 | トヨタ自動車 |
2位 | ブリヂストン |
3位 | ファーストリテイリング |
4位 | 日産自動車 |
5位 | 花王 |
6位 | 良品計画 |
7位 | ホンダ |
8位 | ENEOSホールディングス |
9位 | ENEOS |
10位 | マツダ |
Dr.キャリアアドバイザー
まとめ ESGを重視する会社に転職しよう
いかがでしたか。
これから成長していく会社とは、間違いなく「ESG」を意識した会社になるという事がご理解頂けたのではないでしょうか。
社会的意義を高めようとする会社では、その社風によってひとりひとりの社員の心構えも違っていることでしょう。
このような企業マインドは、みなさんのやる気や成長につながるはずです。
20世紀型の会社ではなく21世紀型の会社を選ぶ事を意識して、ぜひ今後のみなさんのキャリアを充実させたものにしましょう。