ミドル世代からの働き方とワークライフバランスについて

ミドル世代からのワークライフバランス?そもそもワークライフバランスって年齢に関係無いですよね。

A君(20代会社員)


Dr.キャリアアドバイザー

そうですね、本来は年齢に関係するものではありませんよね。しかしワークライフバランスを意識しているのは、圧倒的に「非管理職の20代・30代」が多いようです。

そうかもしれませんね、ボクの上司からワークライフバランスなんて言葉はあまり聞いた事がありません。たしかに最近では「有給取得」とか「残業をあまりしないように」と指示はありますが。それって私たち部下に対する言葉であって、ご自身がワークライフバランスを気にされているようには思えません。

A君(20代会社員)

Dr.キャリアアドバイザー

A君の仰る通りなのです。管理職のみなさんは、部下には残業をさせないようにしたり、有給取得を奨励したりしていますが、ご自身はあまり働き方が変わっていないようなので、本当に不思議ですよね。

 

ミドル世代からの働き方とワークライフバランス、これはいったいどういう事なのでしょう。

 

ポイントは「働き方改革」「高年齢者雇用安定法」です。

 

働き方改革

 

働き方改革が本格化するようになって、残業時間の抑制や有給休暇の取得促進、そして副業解禁が浸透してきています。

 

しかし働き方改革が本格化する一方で「役職者(特に40代の課長)の負担が増えている」事が懸念されています。

 

高年齢者雇用安定法

 

そしてもう一点。

 

高年齢者雇用安定法の改正の施行によって、会社員は定年が延長されることになります。

 

つまり会社員は「年金問題」等もあり、今後はおそらく70歳まで働く時代になるでしょう。

 

Dr.キャリアアドバイザー

このような事から、40代の役職者を中心に、今まで以上に健康・体調管理やメンタル管理をしなければなりません。そのためにもワークライフバランスがとても重要な時代になるはずなのです。

 

他人事ではありません。特に40代からは要注意!

 

Dr.キャリアアドバイザー

ワークライフバランスについては、40代位から本気で注意するべきテーマだと思います。人によっては30代でも早くないかもしれません。

「30代でも早くないかも!」とあります。ボクにとってもそんなに先の話しではないので、何に注意するべきなのかとても気になります。

A君(20代会社員)

Dr.キャリアアドバイザー

どういう事かというと、キーワードは「働き方改革」「役職者」です。まずは今どの位の割合で役職者がいるのかをチェックしてみましょう。

 

みなさんの会社でも、40代位になると役職者(課長や部長など)になる人が多くありませんか?

 

もちろんこれは各社の事情によりますので、20代で役職者が多い会社もあれば40代でも役職者が少ない会社もあると思います。

 

ちなみに「100人以上」の会社規模での役職者の割合は以下のようになっています。

 

役職者比率(企業規模1000 人以上、2004年データ)

部長 152,720
課長 417,430
係長 329,490
職長 117,030
その他職階 545,820
役職者(小計) 1,562,490
非職階 4,528,470
合計 6,090,960
部長比率 2.5%
役職者比率 25.7%

参照サイト:独立行政法人労働政策研究・研修機構

 

役職者の比率が約25%という事は、4人に1人が役職者になるのですね。結構な人数ですよね。

Bさん

Dr.キャリアアドバイザー

そうなんです。4人に一人の割合になりますので、かなりの人がワークライフバランスに注意した方が良いと思います。ちなみに男性だけでなく、女性の管理職の方もこのテーマは考えた方が良いと思います。

 

女性役職者のいる割合(従業員30人以上)

年度 女性課長職以上がいる会社
平成27年度 59.0%
平成28年度 58.8%

 

女性役職者の割合(従業員30人以上)

年度 管理職の中での女性比率
平成27年度 7.8%
平成28年度 8.7%

参照サイト:厚生労働省公式サイト

 

Dr.キャリアアドバイザー

女性役職者のいる会社が約半数、そして管理職の中での女性比率が10%未満。もう少し多いのかと思いましたが、これではまだまだ女性の割合が充分とは言えませんね。

もう少し女性の地位改善をお願いしたいところです。本当に日本はジェンダーという点で遅れてますよね!

Bさん

働く会社員の4人に一人が役職者なのは分かりました。また女性の役職者の方も注意した方が良いのも分かりました。ところでなぜこの役職者たちがワークライフバランスに注意しなければならないのですか?

A君(20代会社員)

 

実は働き方改革の施行以降、課長等の役職者の体調不良が増えているなのです。

 

一度体調不良(特にメンタル)になると、その後の人生全てが台無しになる事もあるので本当に心配です。

 

それでは次章でもう少し詳しく見て行きましょう。

 

中間管理職の体調管理が課題に!?

 

Dr.キャリアアドバイザー

会社には大別すると、経営者・役職者・一般社員といますが、この役職者の体調不良が問題になっています。主には中間管理職と言われる課長職に体調不良が多いようです。

 

日本産業カウンセラー協会によりますと、メンタル相談についての相談が多いのが「男性(女性の2倍以上)」「中間管理職にあたる40代」のようです。

 

そしてこの役職に就いているミドル層のメンタル不調の原因は主に2つあります。

 

役職者のストレスの原因
①人間関係

②変わらない残業時間と増える仕事量

 

上記2点が役職者のストレスになり、人によっては体調不良になってしまうのです。

 

参照サイト:日本産業カウンセラー協会公式サイト

 

人間関係に疲弊

Dr.キャリアアドバイザー

40代のミドル層で課長の役職にある人に、特に体調不良が多いようです。

えっ、課長ですか?いつもボクたちにプレッシャーをかけていますし、そんな感じはしないですが。口うるさい分、みんなには疎まれている感じですが。

A君(20代会社員)

Dr.キャリアアドバイザー

まさしくそこです。課長はいわゆる中間管理職。部長からのプレッシャーだけでなく、部下からのプレッシャーも感じているのです。それでは課長が抱える人間関係の悩みについて見ていきましょう。あくまで一例ですが参考にしてみてください。

 

課長と部下の関係について

 

まず課長と一般社員の大きな違いは「マネージャー」「プレイヤー」の違いにあります。

 

つまり仕事内容がまったく違うのです。

 

そうすると現場の温度感を理解出来ない課長の失言等は、「現場の事は何も分かってないくせに!」と部下から陰口を叩かれやすいのです。

 

なるほど。こうしていつしか部下の気持ちが離れていき、孤独な存在になってしまうのですね。ちょっとかわいそうな気もします。

Bさん

 

課長と上司の関係について

 

課長の業務は、「マネージャー」or「マネージャー兼プレイヤー」の2種類。

 

いずれの業務にしても、上司(会社)が課長に求める事は「チームでの業績の最大化」です。

 

目標が未達成で部長からのプレッシャーもあることでしょう。

 

課長自身は普段は部下に対してプレッシャーをかけているので、いざ部長からプレッシャーを受けたとしても部下に相談など出来ません。

 

Dr.キャリアアドバイザー

このようにして課長は孤独になるのです。ツライ立場ですよね。上からも下からもプレッシャーを感じるのですから。

プレイヤーをやりながらマネージャーもやって、その上チーム全体の業績にも責任を負わないといけないなんて、ちょっとシンドイですよね。こういう話しを聞くと、あまり役職者に興味が持てないです。

Bさん

 

変わらない残業時間と増える仕事量

 

働き方改革関連法が2019年4月から順次施行されはじめて、残業時間の抑制や副業の解禁などが目立ち始めました。

 

多くの会社でコンプライアンスが認識されるようになり、今まで厳しかった上司から「早く帰るように」「休みをちゃんと取るように」と信じられない言葉を聞くようになった人も多いはず。

 

Dr.キャリアアドバイザー

今までが異常だったのでしょうが、社内で堂々と「ワークライフバランスを充実させたい!」と言える風潮になったのです。

 

しかし働き方改革で、その働き方が改善されたのは一般社員。

 

逆に中間管理職、とくに課長は働き方改革によってさらに忙しくなったようなのです。

 

働き方改革で課長が窮地に

 

中間管理職が体調不良になりやすい理由の1つが「仕事量が増えた」事が原因のようです。

 

Dr.キャリアアドバイザー

それでは以下のグラフで、働き方改革が施行されてから、管理職の残業時間の変化についてチェックしてみましょう。

 

中間管理職に聞く、残業増えた?減った?

残業時間について(管理職) 割合
とても増えた 3.6%
やや増えた 9.2%
変わらない 61.2%
やや減った 22.1%
とても減った 3.9%

参照サイト:リクルートスタッフィング公式サイト

 

中間管理職の約6割が残業時間については「変わらない」と回答しています。

 

また、「やや減った」「とても減った」と回答した人が約26%となっていました。

 

たしかに前からそうなんですが、ウチの課長が早く帰ったのを見たことないですね。相変わらずボクたちよりは遅いです。「課長ってそんなものなんだな!」としか思っていませんでした。

A君(20代会社員)

 

それでは一方の一般社員の残業時間はどのように変化しているのでしょうか。

 

一般社員に聞く、残業増えた?減った?

残業時間について(一般社員) 割合
とても増えた 2.7%
やや増えた 6.8%
変わらない 54.6%
やや減った 30.1%
とても減った 5.8%

参照サイト:リクルートスタッフィング公式サイト

 

これは納得の結果ですね。ボクは確実に以前より残業時間が減っていますので。

A君(20代会社員)

私の会社も同じですね。ノー残業デーが徹底され始めたので、以前よりは残業が減っています。でもその分残業代も減っているので、ちょっと複雑です。残業したくても出来ない事もありますし。

Bさん

 

このように「中間管理職(課長)」と「一般社員」の残業時間を比較してみると以下の事が分かりました。

 

残業時間が「増えた」のは中間管理職

残業時間が「変わらない」のは中間管理職

残業時間が「減った」のは一般社員

 

上記の通り、中間管理職の役職者の残業時間が減らない一方で、一般社員については確実に残業時間が減っているようです。

 

減らない課長の仕事、増える課長のストレス

 

課長の残業は「変わらない」「増えた」で約75%。

 

働き方改革が叫ばれている中、なぜこのような事になるのでしょう。

 

中間管理職(課長)にその理由を聞いていますので、見ていきましょう。

 

残業時間が増えた理由

残業が増える理由 割合
課全体の管理業務 71.7%
部下のサポート業務 58.5%
他部署との調整業務 49.1%
プレイング業務 47.2%
その他 3.8%

参照サイト:リクルートスタッフィング公式サイト

 

多くの場合、中間管理職は自分の業務をこなしながら部下の面倒を見なければなりません。

 

そのため部下の残業時間が減るという事は、上司の仕事量が増え、残業時間も増えて行くのです。

 

Dr.キャリアアドバイザー

これでは、働き方改革によって課長のストレスは増える一方ですよね。

 

それでは中管理職にストレートに聞いてみましょう。

 

部下の残業時間削減のため仕事量が増えていると感じますか?

仕事量が増えたと感じるか 割合
とても感じる 9.7%
やや感じる 24.5%
変わらない 52.4%
あまり感じない 11.2%
まったく感じない 2.2%

参照サイト:リクルートスタッフィング公式サイト

 

中間管理職の34.2%が「部下の残業時間削減のために仕事量が増えている」と答えているのです。

 

働き方改革の盲点

 

Dr.キャリアアドバイザー

働き方改革とは、本来は社員の労働環境を改善するはずの制度ですが、なぜか中間管理職は働き方改革によって労働環境が悪化しているようです。

 

これはどういう事なのでしょう。

 

その大きな要因は労働基準法にあります。

 

労働基準法は管理監督者には適用されないことも多く、働き方改革が施行されても役職者に適用されない事があるのです。

 

これではいくら働き方改革と言っても、役職者にとっては意味がないでえすよね。

 

70歳まで働く私たち

 

Dr.キャリアアドバイザー

課長などの役職者が大変なのはよく分かりました。そしてこれからの時代は定年延長により、今以上に長く働くようになると思います。

 

多くのストレスにより万が一体調不良になってしまうと、その後も長く続く会社員生活が台無しになります。

 

それゆえに役職者が多くなる40代のみなさんは、ワークライフバランスの重要性を再認識して欲しいのです。

 

高年齢者雇用安定法について

 

2021年4月より高年齢者雇用安定法の改正により、各社は4月から従業員が70歳まで働けるよう努力義務を負うことになります。

 

現行の高年齢者雇用安定法では、各社に対して65歳までの雇用を確保するために「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいづれかを行わないといけません。

 

この現行制度が2021年4月からは70歳まで延ばすことになる制度です。

 

一般社員の8割以上が「課長になりたくない!」

 

働き方改革によって、労働環境が改善されているはずなのに、管理職の労働環境はあまり改善されていないようです。

 

そしてこのような事実を誰よりも理解しているのが「一般社員」なのでしょう。

 

それゆえ、一般社員の約8割以上が「課長になりたくない!」と考えているようなのです。

 

年代別「課長になりたい」割合

年代別 男性 女性
20代 30% 26%
30代 30% 16%
40代 10% 10%
50代 8% 6%

参照サイト:マンパワーグループ公式サイト

 

年代別に見ていくと若い世代の方が管理職志望の割合が多いようです。

 

しかし、多いと言っても「30%」。

 

つまり大半の「70%」は管理職に興味が無いようです。

 

それでは「なぜ管理職に興味が無いのか」のアンケート結果を見てみましょう。

 

課長になりたくない理由

理由 割合
責任の重い仕事をしたくない 51.2%
報酬面でのメリットが少ない 40.4%
業務負荷が高い 40.4%
面倒な調整業務が多い 28.3%
部下育成に興味がない 20.8%
今の仕事に満足 20.2%
やりたい仕事が出来なくなる 16.9%
管理職より自分の専門性を高めたい 12.0%

 

Dr.キャリアアドバイザー

どうやら管理職に興味の無い人のうち半数が「責任の重い仕事をしたくない」ようです。責任の重い仕事の方が、やりがいのある仕事が多い傾向にあるのですが、あまり人気は無いようですね。

 

まとめ ミドル世代からのキャリアについて

 

Dr.キャリアアドバイザー

40代の課長さんがストレスが多いのは理解しました。そしてそのような上司を見て、「私は(ボクは)課長になんてなりたくない!」といった声があるのも理解しました。

たしかにお給料は増えるのかもしれませんが、その金額に見合った仕事には思えないんですよね。なので、あまり課長とかマネジメントに興味が持てません。

A君(20代会社員)

そうでうね、私もA君の意見に同意です。マネジメント中心の仕事だと、自分のスキルも伸ばせない気がします。

Bさん

Dr.キャリアアドバイザー

Aさんの意見もBさんの意見もよく分かります。それでも一方で役職者の方が大きな仕事が出来る、マネジメント出来る機会があります。それも大きなやりがいだと思います。

 

Dr.キャリアアドバイザー、A君、Bさん、すべてのご意見はごもっともだと思われます。

 

しかしこれから「労働環境」が大きくシフトする可能性があります。

 

それが「ジョブ型の人事制度」です。

 

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Dr.キャリアアドバイザー

ジョブ型の制度とは、まさしく成果主義。この制度により会社員の働き方、会社員に対する評価等がガラリと変わってきます。

 

私たちに待ち受けているのは、「実力主義で、かつ定年の延長」です。

 

このような時代を生き抜くためには、やはり基本は「身体と精神の健康」になるでしょう。

 

そのためにももう一度「ワークライフバランス」について見なおしてみましょう。