老人ホームとグループホームの違い、忙しいあなたへ選び方のコツと事例ガイド

「老人ホームとグループホームの違い」が分からない。このような人が多いようです。

老人ホームとグループホームは、そもそも入居対象者やサービス内容がまったく違ってきます。そうすると「親にどちらをすすめたらいいか」「サービスや費用はどう違うのか」「メリットだけでなくデメリットも知りたい」といったことも理解できないままで、適切なサービスをおすすめできません。

そこで本記事では次の3点を重視してお知らせします。

1. 実例ベースで違いを理解する
2. ビジネスケアラーが仕事と介護を両立するための注意点を知る
3. 最終的に「どちらを選ぶべきか」を具体的にイメージできるようにする

「老人ホーム」と「グループホーム」、そもそも何が違う？

「老人ホーム」の定義

• ざっくり言うと：幅広い自立～要介護層を受け入れる施設全般の総称。
• 代表的な種類
  • 有料老人ホーム（介護付き／住宅型／健康型）
  • サービス付き高齢者向け住宅（サ高住）
  • 特別養護老人ホーム（特養）※公的優先度が高く、要介護度が高い人向け
• メリット
  • 24時間体制で介護スタッフや看護師が常駐しているケースが多い
  • レクリエーションや食事サービスが豊富で、入居者同士の交流機会がある
  • 比較的自立度が残っている高齢者でも入居しやすい
• デメリット
  • 入居一時金が数百万円かかる場合がある（特に介護付き有料老人ホーム）
  • 施設によっては「スタッフ1人あたりの入居者数」が多く、手厚いケアを受けにくいケースがある
  • 同じフロアに認知症の方と自立度の高い方が混在すると、生活リズムの違いでストレスを感じる場合がある

「グループホーム」の定義

• ざっくり言うと：認知症ケアに特化した少人数（6～9名程度）の共同生活施設。
• 特徴
  • 入居者同士で料理・掃除・買い物などの日常動作を分担しながら生活する
  • スタッフは認知症ケア研修を受講した担当者が配置され、一人ひとりの生活リズムに寄り添う
  • 介護保険の認可を受けた「認知症対応型共同生活介護（グループホーム）」として運営
• メリット
  • 家庭に近い環境で「やれること」をできる限り本人に任せるため、自尊心が保たれやすい
  • 少人数制でスタッフの目が行き届きやすく、認知症の進行が比較的緩やかになるケースがある
  • 家庭的な雰囲気が強く、認知症の方の不安や焦燥感を軽減しやすい
• デメリット
  • 要支援2～要介護2（施設によっては要介護3まで）の入居基準で、受け入れ範囲が狭い場合がある
  • 共同生活なので、プライバシー重視の方や自分のペースを崩されたくない方にはストレスとなる
  • 空室が少なく、入居待機期間が長くなるケースがある

 

サービス内容がどう違う？日常の「暮らし方」徹底比較

生活空間・居室構成の違い

• 老人ホーム（一般的な有料老人ホームなど）
  • 個室＋複数の共用スペースが主流。プライバシー重視の設計が多い
  • 食堂や趣味室などがあり、自由に移動して交流できる
  • スタッフステーションがフロアごとにあり、緊急時の駆けつけがスムーズ
• グループホーム
  • 6～9名程度のユニットで1つのリビング・ダイニングを共同使用。家庭的な雰囲気が強い
  • 個室は狭めだが、リビング周辺にキッチン・お風呂・トイレがまとまっているため動線がシンプル
  • 共同スペースで入居者とスタッフが自然に会話しながら過ごせる設計

ケアスタッフと医療連携体制の違い

• 老人ホーム
  • 介護付き有料老人ホームや特養では、看護師が24時間常駐しているケースがある
  • 介護職員の数も比較的多く、入居者1人あたりの担当比率が高い施設が増加中
  • 提携医療機関数が多く、往診や救急搬送の体制が整っている
• グループホーム
  • 24時間介護スタッフが配置されるが、看護師常駐ではない場合が多い（往診医や訪問看護と連携）
  • スタッフは認知症ケア研修修了者が多く、認知症対応に特化したノウハウを持つ
  • 提携医療機関数は1〜2か所に限られるケースがあり、緊急搬送の際に時間がかかる場合がある

日中のプログラム・レクリエーションの違い

• 老人ホーム
  • 外部ボランティアや地域交流イベントが豊富（お花見・お祭り参加・音楽療法など）
  • 専門スタッフによる体操・機能訓練、趣味クラブ（書道、手芸、カラオケ）など多彩なプログラム
  • 入居者同士の交流会や季節行事を大規模に実施するケースがある
• グループホーム
  • 料理や掃除、買い物など日常家事をプログラム化し、認知症予防につなげる
  • お花見や外出レクもあるが、少人数なので「ゆったりと楽しむ」スケジュール
  • 入浴・食事・掃除を共同で分担し、生活リズムを整えやすい設計

 

費用構造の違いをリアルに把握する

初期費用（入居時にかかる金額）の違い

• 老人ホーム
  • 入居一時金：0円～数百万円（施設によって大きく差がある）
    • 例）介護付き有料老人ホームA：入居一時金300万円
    • 例）介護付き有料老人ホームB：0円プランあり
  • 敷金・礼金・保証金：不要～家賃1〜2か月分程度（物件による）
  • 入居契約手数料：0円～数万円
• グループホーム
  • 敷金・保証金：家賃1〜2か月分程度が多い（約10〜20万円程度）
  • 入居一時金：原則なし（備品費や事務手数料数万円がかかる場合も）
  • ケアプラン作成費：数千円〜1万円ほど（初回のみケアマネへ支払うケースがある）

月額利用料（毎月かかる費用）の比較

• 老人ホーム（介護付き有料老人ホームの場合）
  • 家賃相当額：10〜15万円（立地・広さによる）
  • 共益費：2〜3万円（光熱費・共用スペース維持費）
  • 食費：3〜4万円（1日3食×約1,000円〜1,200円）
  • 介護サービス費：要支援〜要介護5に応じて1〜5万円（介護保険自己負担1〜3割）
  • → 合計：16〜27万円ほどが目安
• グループホーム
  • 家賃相当額：8〜12万円（施設による）
  • 光熱水費：1〜1.5万円
  • 食費：3万円（3食分すべて込み）
  • 介護サービス費：要支援2〜要介護5に応じて2〜6万円（自己負担1〜3割）
  • → 合計：14〜22.5万円ほどが目安

補助金／助成金を活用した費用の抑え方

• 老人ホーム
  • 介護保険の「特定施設入居者生活介護」を適用し、月々の介護サービス費を抑える
  • 自治体によっては「高齢者住宅改修費補助金」を利用し、自宅リフォーム済み後の移行で割引を受けられる
  • 「介護休業給付金」を活用して、家族が介護休業を取得した際の収入減に備える
• グループホーム
  • 介護保険内の「認知症ケア加算」「特定事業所加算」を活用し、手厚いケアを提供してもらう
  • 市町村の「認知症高齢者生活支援補助金」を利用し、自己負担を一部軽減できる場合がある
  • 「地域包括支援センター経由での申し込み」で、初回相談費用が無料になったり、見学費用が補助されるケースがある

 

ケーススタディで比較：こんな家族・本人にはどちらが向いている？

ケースA：認知機能低下があるが、家庭的な環境で暮らしたい高齢者

家族構成・状況：
妻（75歳・認知症初期・要支援2）、夫（80歳・元気だが妻の世話が負担に）。子どもは遠方で平日はサポートが難しい。

• 老人ホームを選ぶ理由／メリット
  • イベントや趣味活動が豊富で、認知症進行予防プログラムが受けられる
  • 24時間体制の看護師・介護スタッフがいるので、夫も安心して仕事を続けられる
  • 個別ルームがあればプライバシーが確保されるため、家族の面会時にもゆったり過ごせる
• 老人ホームのデメリット
  • 認知症が進行すると「自分で動く意欲」が減り、提供されるプログラムに飽きてしまう可能性がある
  • 同じフロアに認知症と自立度が高い人が混在すると、生活リズムのズレでストレスを感じる場合がある
• グループホームを選ぶ理由／メリット
  • 少人数で家庭的な雰囲気の中、料理や掃除など日常生活を役割として参加できるため、認知症進行が比較的緩やかになる
  • 認知症ケア研修修了のスタッフが対応し、細やかな見守りが受けられる
  • 家族が遠方でも、「生活の様子を日々メールやLINEで共有してくれる」サービスがあると安心
• グループホームのデメリット
  • 看護師常駐ではないため、急変時には往診を頼む必要があり、緊急対応に時間がかかる場合がある
  • 共同生活が苦手な方や人見知りが強い方にはストレスになることがある

ケースB：要介護度は低めだが、家事サポートが必要な単身高齢者

家族構成・状況：
一人暮らしの父（82歳・要支援1）。料理や掃除ができず、身の回りのサポートが必要。母は他界、兄弟も遠方で週1回しか訪ねられない。

• 老人ホームを選ぶ理由／メリット
  • 食事・掃除・洗濯など生活支援が手厚く、生活全般をまるごと任せられる安心感がある
  • 趣味クラブやイベントが充実しているため、退屈せずに過ごせる
  • 緊急時には24時間体制の看護師が対応してくれる施設を選べば、家族も安心
• 老人ホームのデメリット
  • 家事を分担する喜びは味わえず、自分でできることが限られると達成感が得られない可能性がある
  • 料金が高額になる場合があり、預貯金が少ないと長期的に住み続けられない不安がある
• グループホームを選ぶ理由／メリット
  • 共同生活の中で若干の家事（野菜を切る・食事配膳など）に参加できるため、適度な役割感を得られる
  • 認知症リスクを抑えつつ、家庭的な雰囲気で生活できる
  • 家賃相当額が比較的安めで、年金生活者でも費用を抑えやすい
• グループホームのデメリット
  • 要支援1だと入居できない施設が多い。要介護2になるまで待機が必要な場合がある
  • 共同生活での人間関係トラブルが起きやすく、性格的に合わないとストレスになる

ケースC：共働き世帯が、両親を別々に入居させたい場合

家族構成・状況：
夫婦ともフルタイム勤務中で子育てもあり。父（78歳・要支援2・軽度認知症）、母（76歳・自立だが家事困難気味）。二人を同じ施設に入れるとニーズが合わず手厚さに偏りが出る可能性がある。

• 父親にはグループホームを選ぶ理由／メリット
  • 認知症ケア専門スタッフによる日常生活リハビリが進行予防に効果的
  • 家庭的な雰囲気で「自分でできること」を任されるため、認知症進行が緩やかになる
  • 兄弟が週末しか面会できない場合でも、「生活の様子をLINEで共有してもらえる」と安心
• 父親のグループホームのデメリット
  • 認知症が急に進行すると対応しきれないユニットもあるため、緊急搬送の流れを確認しておく必要がある
  • 共同生活が合わない場合、転所先を自力で探す必要があるケースがある
• 母親には老人ホームを選ぶ理由／メリット
  • 自立度が高く、趣味や交流を楽しみながら生活できる
  • 食事・掃除など生活全般を任せられるので、夫婦とも仕事に集中しやすい
  • 介護度が少し上がってもプラン変更がスムーズな場合が多い
• 母親の老人ホームのデメリット
  • 自立度が高くても「自分で料理する楽しみ」はなくなる可能性がある
  • 入居一時金と月額利用料が高額で、家計負担が重くなる

 

失敗しないためのチェックリスト＆質問リスト

チェックリスト：見学時に必ず確認すべき６つのポイント

1. 入居対象・要介護度の対応範囲
   – 老人ホーム：軽度～中度要介護者まで対応できるか、重度対応フロアの有無
   – グループホーム：要支援2～要介護2以上で入居可能か、認知症度合いの範囲確認
2. スタッフ配置と緊急対応体制
   – 老人ホーム：看護師・介護スタッフの常駐時間、夜間オンコール体制、緊急搬送先リスト
   – グループホーム：認知症ケア研修修了者の配置比率、往診医・訪問看護との契約状況、夜間の対応方法
3. 生活プログラムとレクリエーションの充実度
   – 老人ホーム：趣味クラブ・運動プログラム、地域交流ボランティアの有無
   – グループホーム：日常家事プログラム（料理・掃除など）の頻度、外出レクの回数
4. 費用内訳と将来の変動リスク
   – 老人ホーム：入居一時金＋月額利用料（家賃・共益費・食費＋介護保険自己負担）の見積もり
   – グループホーム：敷金・保証金＋月額費用（家賃相当＋光熱費＋食費＋介護保険自己負担）の見積もり
5. 医療連携・通院サポートの仕組み
   – 老人ホーム：提携病院（内科・整形・歯科など）のリスト、往診頻度、緊急搬送の流れ
   – グループホーム：往診医の担当頻度、訪問看護との連携度、緊急搬送手順
6. 家族向けサポート・情報共有方法
   – 老人ホーム：面会しやすい時間帯（夜間や週末含む）やオンライン面会サービスの有無
   – グループホーム：家族向け説明会の頻度、ケアマネやスタッフとの定期連絡手段（電話／メール／専用アプリ）

質問リスト：違いをはっきりさせるために必ず聞くべき３大質問

1. 「要介護度が上がった場合、どうサポート内容が変わるか？」
   – お金（介護度加算）とサービス量がどう増減するか、具体的な金額例とケアメニューを確認。
2. 「24時間の緊急対応体制はどう違うか？」
   – 看護師常駐時間、夜間オンコール体制、緊急搬送の流れを施設ごとに比較。
3. 「費用の内訳（入居一時金・敷金・保証金・月額費用・介護保険自己負担）の具体的差は？」
   – 初期費用と月額費用の内訳、それに介護保険適用後の自己負担額を試算してもらう。

ビジネスケアラー向け補足ポイント

• 面会のしやすさとオンライン面会の可否
  – 仕事帰り（夜間）や週末しか面会できない場合、オンライン面会や短時間の面会プランが整っているかどうかを確認します。 – 「面会予約はどれくらい前に必要か」「突然行ったときでも短時間だけ会わせてもらえるか」を必ず問い合わせましょう。
• 家族・ケアマネ・スタッフとの情報共有方法
  – 定期的な報告（写真・動画つき）をメールやLINEで受け取れるかどうか確認します。 – ケアマネジャーとオンラインで月1回は状況を確認するミーティングができるか、あらかじめ伝えておくと安心です。

 

Q＆A：よくある疑問を解消しよう

Q1. 老人ホームとグループホーム、結局どちらを選べばいい？

A1. 大きく分けると以下の通りです。

• 認知症の有無・要介護度
  – 要介護度が低く認知症リスクが少ない方：老人ホームでOK。 – 認知症ケアが必要な場合：グループホームを検討しましょう。
• 家族のサポート体制
  – 平日はサポートが難しく、週末しか面会できない場合：24時間対応の老人ホームが安心です。
• 経済的余裕
  – 老人ホームは初期費用が高額になりやすいので、予算をしっかりシミュレーションしてください。

Q2. グループホームに入居するために必要な条件は？

A2. 主な条件は以下のとおりです。

1. 医師の認知症診断書が必要（認知症確定）
2. 要介護認定で要支援2〜要介護5であること（施設により異なる）
3. ケアマネジャーと相談し、グループホームが本人に合うと判断されること
4. 見学→面談→契約の流れ。空きが少ないため、待機リストに名前を登録する場合がある

Q3. 老人ホームの「入居一時金0円プラン」は本当にお得？

A3. 一時金0円プランは初期費用がかからないように見えますが、月額利用料が他施設より高く設定されているケースが多いです。契約前に内訳を確認し、3～5年後のトータルコストを比較して判断してください。

Q4. グループホームはいつまで入居できる？要介護度が上がったら退去？

A4. 多くのグループホームは「要介護度3〜4」になると入居が難しくなるケースがあります。退去後は介護付き老人ホームや特別養護老人ホームへ移る必要があるため、事前にケアマネジャーと移行プランを相談しておきましょう。ただし、要介護4〜5まで対応可能なグループホームも一部あるので、見学時に確認してください。

 

まとめ：選ぶときにチェックすべき８つのポイント

1. 認知症の有無・要介護度
   – 要介護度が低く認知症リスクが少ない場合：老人ホーム。認知症ケアが必要な場合：グループホーム。
2. 生活空間のイメージ
   – 個室＋共用スペースで自由に過ごしたい：老人ホーム。家庭的な雰囲気で少人数の仲間と暮らしたい：グループホーム。
3. スタッフ配置と緊急対応体制
   – 看護師常駐・往診体制を要するなら老人ホーム。認知症専門ケアを重視するならグループホーム。
4. 日中のプログラム内容
   – 趣味活動や地域交流を楽しみたい：老人ホーム。日常家事をリハビリとして生活したい：グループホーム。
5. 初期費用と月額利用料の内訳
   – 入居一時金＋月額利用料などを具体的に試算し、長期的な家計負担を把握する。
6. 補助金・助成金の活用可能性
   – 自治体の高齢者住宅補助金、認知症支援補助金、介護休業給付金などをケアマネと確認。
7. 家族・ケアマネ・スタッフとの情報共有方法
   – LINEやメールでの日常報告、オンライン面会、定期ミーティングの仕組み作りを整える。
8. 退去後の移行プラン
   – グループホーム→要介護度が上がったら次に移る施設をあらかじめ調査。老人ホーム→介護度変化による追加費用やプラン変更の想定。

以上を参考に、「老人ホームとグループホームの違い」をしっかり理解し、ご自身やご家族に最適な選択肢を見つけてください。必要に応じてケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談しながら、安心して入居先を決めましょう。