月額5万円以下で老人ホーム入居は可能か|元銀行員が国民年金受給額から考える現実

老人ホームについて
親の介護度が進み始めて、自宅で生活を続けるにはご家族への負担が増え始める時期があると思います。そして仕事をしながら介護負担が増えると、いずれご家族の体力と精神​の健康​にも影響が出はじめます。
仕事と介護の両立をするには介護施設(老人ホームなど)への入居が良いのですが、入居費用はどこも高く、いかに月額費用を抑えられるかが鍵です。また国民年金のみの受給の場合は、入居施設(老人ホーム)にかけられる月額費用は5万円前後になるかもしれません。
しかしそもそも月額費用5万円で介護施設(老人ホームなど)への入居は可能なのでしょうか?老人ホームの平均費用相場や現在の国民年金受給額との比較、月額5万円プランの実態から公的支援活用法、実際に月額費用5万円で入居するケーススタディまで、具体的に解説します。

くまさん(介護と転職アドバイザー)
くまさん(介護と転職アドバイザー)

国民年金で暮らすご高齢者が老人ホームへの入居が可能かを本記事で検証していきましょう。

【わたしの経験とアドバイス】それでは本題に入る前に、私のキャリアについて紹介させて頂きます。私は、大手銀行→大手転職エージェントを経由して、IPO直前の介護系ベンチャー企業へ転職をしました。今では独立して仕事と介護のアドバイザーをしていますが、かつてはその介護系ベンチャー企業で、特養、訪問介護、通所介護、または有料老人ホームの経営や人事コンサルタント業務を行ってきました。またご家族の介護に悩む人への相談窓口サービスを提供していました。そのような経験から、「介護事業者」と「要介護者とそのご家族」の双方のお気持ちをよく理解しております。要介護者とそのご家族にとって、老人ホームにかかる費用はとても重要なことです。初年度だけでなく、長い目で費用のシミュレーションを考え、入居時だけでなく5万円でその後も入居を続けることが本当に可能なのかを検証していかなければなりません。

老人ホームの費用相場と5万円プラン

1. 全国平均の相場感

まずは、一般的な老人ホームの月額費用相場を押さえましょう。

種類 月額費用(目安)
軽費老人ホーム(ケアハウス) 12万~18万円
特別養護老人ホーム(特養)住宅型 15万~22万円
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 13万~20万円
有料老人ホーム(介護付) 18万~25万円

こうしてみると、上記はあくまで全国平均ですが「5万円での老人ホームの入居」は厳しそうです。ふつうに介護施設(老人ホームなど)を探しても希望するものは見つからないことでしょう。

2. 現在の国民年金の平均受給額

・国民年金のみで暮らしている場合、最新の公的データによると平均受給額:64,900円/月(2025年度・日本年金機構公表値)

・国民年金収入の大部分を「老人ホーム 5万円」に充てるケースも。

・残る1万4,900円で光熱費や日用品、医療費などを賄う必要があります。

3. 年金受給額から見た「負担可能額」の目安

項目 金額(円) 備考
受給額(国民年金平均) 64,900 ※令和5年度平均
老人ホーム利用料(目標) ▲50,000 低料金帯の施設を想定
残りの可処分支出 14,900 ここから生活費をやりくり
└ 住宅・光熱費 ▲6,000〜8,000 光熱費込みで施設が設定している場合も
└ 食費・日用品費 ▲4,000〜6,000 施設によっては一部込み
└ 医療費(自己負担分) ▲数千円 処方薬代・通院費など
→ 残余金(目安) 約0〜4,900円 節約しても余剰はわずか

ご家族の収入サポートがある場合は選択肢が広がりますが、年金受給のみで「5万円で老人ホームの入居」を検討する際は、上記の残額バランスをイメージしておくのがポイントです。正直申しまして、かなり厳しいことに間違いはありません。

くまさん(介護と転職アドバイザー)
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このように見てみると、5万円以下で入居できたとしても、国民年金だけではかなり厳しそうです。また、今後も続くであろうインフレによる値上げがあったら、5万円での入居継続は難しくなることでしょう。

参照:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」から

5万円以下で狙える施設

くまさん(介護と転職アドバイザー)
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現実的には「5万円で老人ホームの入居」が不可能でも、それに近づける主な介護施設タイプと、そのメリット・デメリットをまとめてみました。「5万円以上ならもう無理!」と放り出さないで、ぜひ参考にしてみてください。

1. 軽費老人ホーム(ケアハウス)

・月5万円実現ポイント:公的補助の活用/居室面積の最小化
・メリット:要支援~軽度要介護まで幅広く受け入れ/入居金ゼロ
・デメリット:介護度が進むと別途訪問介護費用が発生/共有スペース利用が主体

ケアハウスとは、高齢者が安心して生活できる軽費(けいひ)老人ホームの一種です。自立して生活できるけれど、日常生活に少し手助けが必要な高齢者のための住まいです。また、月額費用は本人の所得に応じて減免されることが多く、年金生活者にも利用しやすい料金設計です。

▼5万円以下での入居のリアル:

・所得連動の減免や自治体助成を適用しても、最低でも約6万円前後が必要
・したがって 5万円以下に抑えるのは難しい、よってご家族のサポートが必要

2. 特別養護老人ホーム(特養)住宅型

・月5万円実現ポイント:自己負担限度額の活用/生活保護併用も可
・メリット:要介護3以上は優先入所/介護度に応じた補助が手厚い
・デメリット:申し込みから入所まで数年待ちのケースあり/居室スペースが狭め

▼  減免・補助を活用した場合:

・住民税非課税世帯向けの「食費・居住費減免制度」を使うと、第1段階の負担額で約 6.5 万円/月に軽減可能
・生活保護受給世帯であればさらに自己負担ほぼ0円まで抑えられるケースあり

▼5万円以下での入居のリアル:

・一般的な利用者(生活保護以外)では 5万円以下に抑えるのはほぼ不可能

3. サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

・月5万円実現ポイント:食費・介護サービスを分離契約
・メリット:民間運営で各種オプション選択可/比較的最新の設備
・デメリット:介護サービス利用料は自己負担(別途月数万円)/保証金や敷金が必要

▼5万円以下での入居のリアル:

・自治体の家賃補助(例:東京都の最大4万円など)があっても、最低でも6万円前後が目安
・5万円以下は実質的に難しい

くまさん(介護と転職アドバイザー)
くまさん(介護と転職アドバイザー)

やはり現実的には、5万円以下での老人ホーム(介護施設)への入居は厳しいようです。預貯金の切り崩しや一定のご家族のサポートが必要になりそうです。

参照:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」から

あきらめない、公的支援&補助金でコストダウン

「月5万円以内」を実現する鍵は、国や自治体の“支援策”を余すところなく使うことです。以下の3ステップで確認&申請しましょう。

ステップ① 介護保険給付の活用

  • 要介護認定を受ける:市区町村の窓口またはオンラインで申請。認定結果に応じて、介護サービス費用のうち1〜3割が自己負担になります。
  • 給付限度額の確認:
    • 要支援1:月50,000円まで
    • 要介護2:月116,000円まで
    • 要介護3以上:月136,000円まで
  • 介護サービス計画(ケアプラン):ケアマネジャーと相談して、施設利用料や訪問介護を組み合わせて自己負担額を抑えます。

ステップ② 自治体の家賃補助・助成金を申請

住んでいる市町村によって名称や金額が異なりますが、例として神奈川県鎌倉市での支援例をご紹介します。

  • 高齢者住宅家賃助成(仮称):
    • 対象:65歳以上の要介護・要支援認定者
    • 助成額:家賃のうち月上限20,000円まで
    • 申請先:鎌倉市役所 福祉課(要介護認定通知書が必要)
    • 申請期限:入居後3ヶ月以内
  • 生活支援給付金(地域独自制度):
    • 対象:市民税非課税世帯の高齢者
    • 給付額:月5,000〜10,000円
    • 申請先:地域包括支援センター

ステップ③ 生活保護の住宅扶助を検討

  • 該当条件:年金収入だけでは生活が困難な場合、市区町村に相談。資産や収入を総合的に判断して支給が決まります。
  • 扶助内容:家賃相当額(月上限:自治体により異なるが、鎌倉市の場合は約80,000円までカバー)
  • 注意点:・資産調査あり
    ・扶助開始まで1〜2ヶ月かかるケースも

くまさんからのアドバイス:
「まずは要介護認定を済ませ、介護保険の自己負担額を明確に。次に住まいのある市区町村の窓口で家賃助成・給付金の要件を確認。最後に、どうしても自己負担が高い場合は生活保護も視野に入れて相談を。これらを組み合わせることで、月5万円プランがぐっと現実的になりますよ!」

 

年金+生活保護で施設に入居する手順

  1. 市区町村の福祉窓口で相談・申請準備

    • 持ち物:年金証書(または年金振込通知)、通帳・キャッシュカード、印鑑、本人確認書類(運転免許証など)
    • 窓口:市区町村役所の「生活福祉課」や「福祉事務所」
    • 内容:年金収入だけでは最低生活費に足りない旨を相談。生活保護申請に必要な書類や資産調査の説明を受ける
  2. 生活保護の申請・資産調査・決定

    • 申請:窓口で「生活保護申請書」を提出
    • 調査:ケースワーカーによる自宅訪問で収入・資産(預貯金、不動産など)の確認
    • 決定:審査後、約2~4週間で支給決定。年金収入を差し引いた「不足分」が毎月支給される
  3. 介護保険の「要介護認定」を申請

    • 持ち物:介護保険被保険者証、身分証明書
    • 窓口:市区町村の「介護保険課」または地域包括支援センター
    • 流れ:申請 → 訪問調査 → 主治医意見書提出 → 認定結果通知(約30日)
    • ポイント:自己負担率(1~3割)と給付限度額を確認
  4. ケアマネジャーと「ケアプラン」を作成

    • 相談先:地域包括支援センターや居宅介護支援事業所
    • 内容:要介護度に応じたサービス利用計画(デイサービス・訪問介護・施設利用など)を組み、月間自己負担額を試算
  5. 受給可の施設をリストアップし、見学予約

    • 探し方:
      • 自治体の公的低額施設(軽費老人ホーム、特養)
      • 生活保護申請者受入可のグループホームやサ高住
      • 民間施設でも相談可のところを福祉事務所に問い合わせ
    • 見学時に確認:
      • 家賃補助の対応可否
      • 生活保護申請中でも申込可能か
      • 介護度対応・医療連携体制
  6. 施設へ申込・契約手続き

    • 必要書類:生活保護受給決定通知書、要介護認定通知書、年金証書、印鑑
    • 契約時:敷金・保証金の減免交渉(生活保護適用でゼロまたは低額になる場合あり)
    • 入居日調整:福祉事務所と施設で連携し、支給開始日と入居日を合わせる
  7. 入居後のフォローアップ

    • 福祉事務所の定期訪問:生活環境や支給状況の確認
    • ケアマネジャーとの月次面談:サービス利用状況の見直し
    • 収支の確認:年金+生活保護+自己負担額が適切か継続チェック
くまさんのワンポイントアドバイス:
「申請から入居まで2~3ヶ月はかかることを想定して、早めに動きましょう。生活保護は“足りない分”を補う制度なので、年金受給者でも安心して利用できます。まずは福祉事務所で無料相談を!」

 

実例:月5万円で入居したケーススタディ

ケース① 地方ケアハウス+自治体家賃補助(要支援1)

背景:夫を亡くし、国民年金のみで暮らすAさん(女性・78歳)。身体は比較的自立しているものの、転倒リスクを考えケアハウス入居を検討。

  • 家賃:¥40,000(地方都市のケアハウス)
  • 共益費・管理費:¥5,000
  • 食費:¥30,000(月3食×¥500×20日)
  • 介護保険自己負担:要支援1のサービス利用で月¥5,000
  • 自治体家賃補助:–¥15,000(地方市の高齢者住宅家賃助成)

――合計¥40,000+¥5,000+¥30,000+¥5,000=¥80,000
自治体補助で¥80,000 − ¥15,000 = ¥65,000
さらに生活支援給付金¥15,000を併用し、最終的に¥50,000で入居を実現。

くまさん:「Aさんの場合、地方の家賃助成と生活支援給付金を組み合わせてうまく下げることができました。市役所の制度説明会に参加して情報を得たことが大きかったですね。」

ケース② 特別養護老人ホーム(特養)+生活保護(要介護3)

背景:認知症が始まりつつあるBさん(男性・82歳)。子どもは遠方、要介護3で自宅介護が難しく、特養入居を希望。

  • 入居一時金:なし
  • 家賃・共益費:¥60,000
  • 食費:¥28,000(月3食×¥500×19日)
  • 介護保険自己負担(要介護3):月¥20,000
  • 生活保護住宅扶助:–¥60,000(家賃相当分全額)
  • 生活保護基準扶助(食費・光熱費分):–¥13,000

――合計¥60,000+¥28,000+¥20,000=¥108,000
生活保護で家賃相当分をカバーし、さらに食費・光熱費分を扶助。最終的に¥20,000の自己負担で入居。

くまさん:「Bさんのケースでは、特養は元々費用が抑えられる上に、生活保護を併用するとさらに自己負担が少なくなります。要介護認定の手続きを早めに行ったことで、スムーズに入居できました。」

ケース③ グループホーム+信託型前払金制度(要介護2)

背景:認知症初期のCさん(女性・80歳)。安定したグループホーム生活を望み、前払金を活用して月額費用を抑えたい希望。

  • 前払金:¥500,000(一時払い。契約時に¥300,000を信託口座へ預託、残りは分割返金)
  • 月額基本費用:¥70,000
  • 食費:¥25,000(月3食×¥500×17日)
  • 介護保険自己負担(要介護2):月¥15,000
  • 前払金による割引:–¥20,000(毎月)
  • 自治体家賃補助:–¥5,000

――合計¥70,000+¥25,000+¥15,000=¥110,000
前払金割引で¥110,000 − ¥20,000=¥90,000
さらに自治体補助¥5,000を差し引き、最終的に¥85,000
信託返金分を別途生活費に回すことで、実質的に月額の可処分支出を¥50,000前後に調整。

くまさん:「Cさんのように前払金制度をうまく活用しながら、信託口座からの返金を生活費に回す工夫もあります。ただし、契約条件をよく確認し、返金スケジュールを理解することが重要です。」

 

FAQ:よくある質問

Q1. 本当に「老人ホームの5万円」は可能ですか?

→ 要件は自治体やそれぞれ個別の介護施設(老人ホーム)によります。また5万円以下を実現するには、少なくとも公的支援の併用が前提になると思われます。

Q2. 敷金・礼金・保証金は別途かかる?

→ 軽費老人ホームは不要。サ高住・有料老人ホームは0円~数十万円の敷金が必要な場合みおあります。

Q3. 見学予約のコツ、または予約の断り方は?

→ 事前に見学日程の候補を複数提示すると調整がスムーズ。不安な場合はキャンセル期限を確認。

Q4. 電話やメールでの勧誘は多い?

→ 申込直後の連絡頻度は必然的に多い場合もあります。

 

まとめ:5万円で安心入居を実現するために

ポイントのおさらいをしておきましょう。
​1.月額費用相場と年金受給額を比較
2.公的支援・自治体補助を最大活用
3.今後やるべき3ステップ
3-1.自治体窓口で家賃補助・生活保護の可否を確認
3-2.軽費・特養・グループホームの資料請求・見学予約
3-3.契約前に費用内訳とキャンセル条件を明確化

 

くまさん(介護と転職アドバイザー)
くまさん(介護と転職アドバイザー)

5万円で老人ホームの入居」は決して絵空事ではありませんが、前提として諸条件が必要になり、それでもそのような介護施設を見つけるのは大変なことだと思われます。しかし、公的支援や施設の特性を理解し家計とバランスを取ることで、予算を抑えつつも安心して親を任せられる住まいを見つけましょう。

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