高齢化社会が進む中、自宅を介護しやすい環境に整える「介護リフォーム」はますますニーズが高まっています。
この記事では、介護リフォームの主な種類(介護リフォーム手すり/介護リフォームトイレ/介護リフォーム風呂など)、国や自治体の介護リフォーム補助金の仕組み、要支援・要介護度別の自己負担割合、認定申請からリフォーム完了までの流れをわかりやすく解説します。

親の安全を守るためには、転ばぬ先のリフォームです。ここでリフォームの種類や手続きについて勉強していきましょう。
介護リフォームの種類
まずはリフォームを検討した方がよい箇所を確認しましょう。

この記事は約5分~10分程度で読み終えますので、しっかりとここでリフォームの種類と申請方法などの手続きについて理解しておきましょう。
手すり設置(介護リフォーム手すり)
・廊下、階段、トイレ、浴室への縦手すりや横手すりの設置で、転倒リスクを大幅に低減。
・材料費+施工費:約3~5万円/ヵ所が目安。
段差解消・スロープ
・5cm以上の段差にスロープ設置、車いす利用もスムーズに。
・DIYでは難しいため、専門業者に依頼を。
トイレ改修(介護リフォームトイレ)
・広めの洋式トイレへの交換・出入口拡幅・手すり追加。
・引き戸化で動線確保、車いす仕様の場合は幅80cm以上を確保。
浴室改修(介護リフォーム風呂)
・段差解消・浴槽のまたぎ高さを低くした「またぎやすい浴槽」への交換。
・浴槽そばに手すりを設置し、滑りにくい床材の採用が必須。
床・扉の改修
・滑りにくいクッションフロアへ交換。
・開き戸→引き戸への変更で転倒リスク・衣服の引っかかりも対策。

介護のリフォーム、種類が多いですがどこから手を付けるべきかと悩まれるかもしれません。ご本人がつまずきやすい場所(玄関・廊下・浴室)から段差解消や手すり設置を優先すると、安全性がグッと上がります。そのうえで、トイレと浴室の改修を段階的に進めていくと、ご家族への負担も分散できますよ。
介護リフォーム補助金の概要
対象要件
・要支援1以上、または要介護認定が決定していること。
・自宅(持ち家・賃貸)であること。
・市区町村所定の書類・工事仕様を満たすこと。
補助額・自己負担
上限補助額 | 自己負担割合 | |
手すり設置・段差解消等 | 20万円 | 補助後の費用を 1〜3 割負担(介護度による) |
滑り止め・洋式トイレ交換 | 10万円 | 同上 |
浴室・出入口改修 | 20万円 | 同上 |
要支援・要介護度別の自己負担割合
介護保険リフォーム補助金利用時の自己負担割合は、介護度に応じて以下のとおりです。
介護度 | 自己負担割合 | 備考 |
要支援1,2 | 1割 | 補助後の費用 |
要介護1~3 | 1割 | 同上 |
要介護4,5 | 2~3割 | 高所得者世帯は3割負担の場合あり |
要支援・要介護認定の申請プロセス

介護保険を適用するには、まずは要介護の認定を受けなければなりません。ここでは認定のための手続きを紹介しますが、すでに認定済みの方はこの章は飛ばしてもらって構いません。
申請前の準備
1.介護保険被保険者証の確認
・原則65歳以上が対象(第1号被保険者)。40歳~64歳の特定疾病該当者(第2号被保険者)は、該当する基礎疾患がある場合に申請可。
・市区町村から交付される「介護保険被保険者証」を手元に用意しましょう。
2.家族やケアマネジャーへの相談
・日常生活の困りごとや医療情報を家族で共有し、どの程度支援が必要か整理しておくと申請時にスムーズです。
・既に居宅介護支援事業所とつながりがあれば、ケアマネジャーに申請書類の入手・記入アドバイスを依頼できます。
申請書類の入手と記入
1.申請窓口
・自治体の「介護保険課」「高齢福祉課」または「地域包括支援センター」(要支援申請の場合はこちらを利用)で受け取ります。近年では、多くの市区町村でホームページから申請書をダウンロード可能です。
2.申請書の主な記入項目
・申請者(本人または家族)情報:氏名・住所・生年月日・介護保険被保険者番号
・同居家族の構成、連絡先
・日常生活で「できないこと」「介助してほしいこと」の具体的記述
▽例:「起床後、ベッドから立ち上がる際に家族の支えが必要」「一人でトイレに行けないことが週に3日以上ある」
・かかりつけ医の氏名・医療機関名(医師意見書に必要)
3.主治医意見書の依頼
・申請書提出後、自治体から「主治医意見書用紙」が本人に送付されます。この用紙を持参し、かかりつけ医に症状やADL(Activity of Daily Living)状況を記載してもらいます。医師への手数料は自治体負担(自己請求なし)が原則です。
訪問調査
1.調査員の訪問日設定
・申請窓口に書類を提出すると、1~2週間以内に市区町村から「訪問日時のお知らせ」が届きます。
・応対者(本人または家族)を決め、立ち会い準備をしましょう。
2.聞き取り調査の内容
・調査員(専門職員)が約30~60分かけて、身体機能・認知機能・生活環境をチェック。
▽主な質問例:
「ベッドからの起き上がりは一人でできますか?」
「料理をする際、包丁の扱いは安全ですか?」
「判断力や見当識に不安を感じることはありますか?」
実際の動作を見せることで、より正確な認定が受けられます。
認定審査と結果通知
1.審査の流れ
・訪問調査結果と主治医意見書をもとに、自治体の「介護認定審査会」で点数化(「要支援1~要介護5」)されます。
・審査期間は原則30日以内。混雑時は若干前後する場合があります。
2.認定結果の受取り
・認定結果(要支援・要介護度)と併せて「介護保険被保険者証」と「サービス利用限度額通知書」が郵送されます。
・サービス利用限度額(1か月あたりの利用上限)は介護度に応じて異なります。
申請後のフォローアップ
1.認定結果に納得がいかない場合
・不服申し立て(再審査申請)は通知受領から60日以内に行えます。
・申請窓口へ「不服申立書」を提出し、再度の訪問調査や審査が行われます。
2.要支援認定後の流れ
・要支援1・2の場合は、市区町村が委託する「地域支援事業(介護予防サービス)」の利用が可能に。
・地域包括支援センターと相談のうえ、体操教室や生活支援サービスを利用開始しましょう。
3.ケアプランの作成依頼
・要介護認定を受けたら、居宅介護支援事業所にケアマネジャーを依頼。
・ケアマネジャーが本人・家族と面談し、個別の「ケアプラン」を作成。これに基づいて訪問介護やデイサービスなど各種サービスを利用します。
介護リフォーム補助金申請の流れ

介護リフォーム補助金の申請は、自治体ごとに多少の違いはありますが、大まかには以下のような流れで進みます。各ステップで必要な書類や注意点を詳しく解説します。
ステップ1:事前相談・情報収集(〜申請1〜2ヶ月前)
自治体のホームページ/窓口で制度概要を確認
・補助対象となる工事項目、補助上限額、自己負担割合、申請期間(年度ごと)をチェック。
・「住宅改修(介護)」や「介護リフォーム補助金」などのワードで検索し、最新版を入手。
ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談
・要支援・要介護認定の状況を伝え、どの工事が補助対象になるかを確認。
・自治体によっては事前に「適用可否」の仮判定を受けられる場合もあるため、早めに問い合わせを。
リフォーム業者選びの準備
・「介護リフォーム実績あり」をうたう業者をリストアップ。
・過去事例や施工写真、補助金申請サポートの有無をヒアリング。
ステップ2:現地調査・見積もり取得(申請2〜4週間前)
1.現地調査(業者・ケアマネ同席)
・業者がご自宅を訪問し、図面作成や寸法測定を実施。
・ケアマネジャーも同席し、計画書に必要な「改修内容の目的」「介護動線の課題」を現地で確認。
2.複数社から見積書を取得
・最低2~3社から、工事項目ごとに内訳を分けた詳細見積をもらう。
・「手すり設置」「段差解消」「トイレ改修」「浴室改修」など、各工事単価を比較。
3.工事仕様の確認
・補助要件(例:手すりは直径32〜40mm、取付高さ80〜90cmなど)に適合しているか、仕様書でチェック。
ステップ3:住宅改修計画書の作成(申請直前)
1.ケアプランとの整合性
・ケアマネジャーが作成する「住宅改修計画書」に、日常生活のどの動作で困っているかを具体的に記載。
▽例:「浴槽またぎ時に家族が支える必要がある」「トイレ出入口の段差で歩行器がつかえない」など。
2.計画書の内容確認
・計画書には、改修箇所ごとの工事内容、概算工事費、工事後に期待される効果(介護負担軽減度合い)を明記。ケアマネ・申請者・業者の押印を忘れずに。
ステップ4:補助金申請書類の提出(申請期間内)
1.必要書類のまとめ
・申請書(自治体指定様式)
・住宅改修計画書
・見積書(複数社分)
・要支援・要介護認定証の写し
・住民票または印鑑登録証明書
・住宅所有者の承諾書(賃貸の場合は管理会社・家主の許可書)
2.提出方法
・窓口持参、または自治体によっては郵送・オンライン申請も可。
・受付印や受付番号を受け取り、控えは工事完了まで大切に保管。
ステップ5:支給決定・通知(申請後2〜3週間)
1.書類審査
・自治体が申請書類をチェックし、補助可否・補助額を決定。
・書類不備があれば、追加提出依頼が来る場合があるので迅速に対応。
2.決定通知の受領
・「支給決定通知書」が郵送で届く。決定額や工事着工期限、完了報告期限などが記載されているので要確認。
・決定前に着工すると補助対象外になるため、必ず通知後に工事開始を。
ステップ6:工事着工・完了報告(支給決定後〜最長3ヶ月程度)
1.工事着工
・決定通知に記載の期限内に工事着手。着工日を自治体へ事前連絡が必要な場合もあります。
2.完了報告書類の準備
・工事写真(ビフォー/アフター)
・領収書原本(工事費・材料費)
・完了報告書(自治体様式)
・建築士・施工業者の完了検査書(必要項目を満たしているか確認した証明書)
3.提出先・方法
・窓口持参または郵送。完了報告を受理後、最終確認が行われます。
ステップ7:補助金交付(完了報告後1〜2ヶ月)
1.交付決定
・完了報告の内容が認められると「交付決定通知書」が届きます。
2.振込手続き
・申請時に指定した口座へ、決定額(補助限度額を上限とした実費分)が入金されます。
・入金日や振込名義を確認し、領収書と照合を。
ポイントと注意点
・申請期間:年度ごとに申請受付期間が限られるため、締切前に必ず提出を。
・書類不備に要注意:申請書・計画書の押印漏れ、認定証のコピー不鮮明、写真不足などで不交付になるケース多数。
・契約書との整合性:見積と実際の請負契約額は同じであること。追加工事は補助外となります。
・期限管理:支給決定から着工・完了報告までの期限をカレンダーに書き込んで把握。
施工業者の選び方と注意点

くまさん、お義母さんのために介護リフォームをお願いしたいんですが、業者の選び方がわからなくて……。どこに問い合わせればいいですか?介護専門のリフォーム業者を探したほうがいいのでしょうか?

そうですよね、いざリフォームとなると“どこに相談すればいいか”迷いますよね。まずは以下のステップで進めてみましょう。
ケアマネジャーに相談
・お義母さまのケアプランを作ってくれたケアマネジャーさんに、介護リフォームについて相談してみてください。
市区町村の福祉課(担当窓口)に問い合わせ
“福祉住環境コーディネーター”在籍業者を選ぶ
複数社に見積もり&事例を比較
無料相談会やショールームを活用
・専門スタッフと直接話すと、自宅の間取りやお義母さまの動線に合う工夫が見えてきますよ。

なるほど、まずはケアマネさんと市区町村から情報をもらって、資格のある業者で見積もりを取るんですね。

その通りです。介護リフォームは“安全第一”ですから、専門知識のあるコーディネーター在籍業者に任せると、転倒防止や動線確保など、細かな配慮までしっかりしてもらえますよ。ぜひ一歩を踏み出してみてくださいね。
まとめ
介護リフォームは「手すり」「トイレ」「風呂」「段差解消」など多彩な工事項目があり、要支援・要介護度に応じた介護リフォーム補助金を活用すると自己負担を大幅に軽減できます。
まずは要介護認定を申請し、ケアマネジャーと住宅改修計画書を作成。複数社から見積もりを取り、自治体へ補助金申請後に工事を進めましょう。
自らの介護度・家族構成・住宅状況を踏まえて、最適な介護リフォーム手すりや介護リフォームトイレ、介護リフォーム風呂を検討し、安心・安全な住まいを実現してください。