【元銀行員が解説】年金だけで入居できる?老人ホームの総費用まとめガイド

老人ホームについて

働きながら親の介護を担う「ビジネスケアラー」にとって、親が老人ホームへ入居した際「費用がどのくらいかかるのか?」は大きな心配事です。

施設選びに失敗すると想定外の費用負担で家計が圧迫され、年金や預貯金ではお金が足りなくなることも。そうするとご家族が援助を続けないと、入居生活が困難になってしまうケースもあります。

本記事では「老人ホームの費用」を軸に、初期費用・月額費用・追加費用の内訳から、施設別の相場比較、公的制度を活用した負担軽減策、年金や貯蓄とのバランスまでを網羅的に解説します。

くまさん(介護と転職アドバイザー)
くまさん(介護と転職アドバイザー)

読み終えれば、自分と親に最適な施設選びのポイントがわかります。最後まで頑張って読破しましょう。(読了時間:4分)

【わたしの経験とアドバイス】それでは本題に入る前に、私のキャリアについて紹介させて頂きます。私は、大手銀行→大手転職エージェントを経由して、IPO直前の介護系ベンチャー企業へ転職をしました。今では独立して仕事と介護のアドバイザーをしていますが、かつてはその介護系ベンチャー企業で、特養、訪問介護、通所介護、または有料老人ホームの経営や人事コンサルタント業務を行ってきました。また新規事業として介護に悩む人への相談窓口業務を立ち上げてサービスを提供していました。そのような経験から、「介護事業者」と「要介護者とそのご家族」の双方のお気持ちをよく理解しております。
そして本記事のテーマについてですが、施設に入る際には、長い目で費用にシミュレーションをすることが重要です。施設は定期的に値上げもするので、そのような点も考慮しておかなければなりません。

介護にはどのくらい費用がかかる?

親を施設に入居をさせたいとき、どのくらいの費用がかかるのでしょう。入居を希望する人のなかには、預貯金には手を付けずに年金だけで費用を捻出したい人もいることでしょう。それでは施設に入居するにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

施設の種別ごとに費用が違います

同じ「有料老人ホーム」と言っても、初期費用の有無や金額そのもの、または定期的に発生する月額費用がまったく違います。

計画的な資金準備が不可欠

年金収入だけでは足りないケースが大半です。預貯金の切り崩しや家族支援なども想定しておいた方が良いでしょう。

くまさんのコメント:
「仕事を続けながら親の将来を考えるのは、本当に心労が絶えませんよね。私もかつて、銀行員時代に親のケアプランを一緒に考えたことがあります。最初の『到底、年金だけじゃ足りないのでは…?』という漠然とした不安を抱えていたあのときの胸の苦しさは、いまでも忘れられません。この記事では、『まずは全体像をつかむこと』がいかに大切かを最初に伝えたいと思います。」

 

費用の基本と「公的施設 vs 民間施設」

1. 費用の3大要素

初期費用

・入居一時金/敷金/前払金

・30万~数百万円(施設による)

月額費用

・居室料(賃料)、食費、管理費、介護保険自己負担分など

・5万~30万円前後

追加費用

・医療費、レクリエーション費、嗜好品代、オプションサービスなど

くまさんのコメント:
「いわゆる『3大要素』を最初に把握しておくと、その後の予算計画がぐっと楽になります。私が介護分野に転職して感じたのは、『初期費用だけ高くても、その先の月額を抑えれば、トータルでは家計に優しい場合もある』ということ。逆に、初期が安くても月額が高いと家計へのダメージが大きいので、どちらかに偏らずバランスを考える目を持ちたいですね。」

2. 公的施設 vs 民間施設

比較項目 公的施設(特養・老健等) 民間施設(有料老人ホーム等)
初期費用 0円~数万円 10万~数百万円
月額費用 5万~20万円程度(所得に応じ軽減あり) 10万~30万円以上
申込待機リスク 高い(長期待機・要介護度の条件あり) 低い(空室があれば即入居可)
サービス内容 医療・リハビリ主体、共同生活 食事・レクリエーション・設備が充実
快適性・立地 地方・郊外中心 都心部・駅近も多く選択肢豊富
くまさんのコメント:
「公的施設はコストが抑えられる分、どうしても待機期間が長くなるのが悩ましいところです。私の友人が要介護3の母親を特養に申し込んだとき、半年以上待った経験があります。一方、民間施設は初期・月額ともに高めですが、『今すぐ入居して、心の余裕を得たい』という場合には有効です。大切なのは、ご自身の家計状況と『いつまでに入居したいか』を家族でしっかりすり合わせることですね。」 

参照:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」から

施設別コスト比較 初期費用&月額費用相場

施設種類 初期費用相場 月額費用相場 主な特徴
介護付き有料老人ホーム 30万~数百万円 20万~30万円 24時間介護+医療連携体制完備。食事やレクリエーションも充実。
住宅型有料老人ホーム 10万~数百万円 10万~20万円 居室を賃貸、介護は外部サービス利用。費用を抑えたり増やしたり調整可能。
サービス付き高齢者向け住宅 10万~30万円 10万~30万円 賃貸住宅に生活支援サービスをセット。緊急通報や生活相談が受けられる。
グループホーム 3万~60万円 8万~25万円 認知症対応型少人数制ユニット。家庭的な共同生活。
特別養護老人ホーム(特養) 0円 5万~18万円 公的施設。要介護3以上対象。待機期間長いが費用は最も低廉。
介護老人保健施設(老健) 0円 6万~20万円 リハビリ重視。家庭復帰を目指す中間的ケア施設。

ケーススタディ:東京23区内の相場例

介護付き有料老人ホームA社

・初期費用:200万円(返金保証なし)

・月額:27万円(家賃15万+管理費3万+食費4.5万+介護費4.5万)

住宅型有料老人ホームB社

・初期費用:50万円(前払金、一部返金あり)

・月額:15万円(家賃8万+サービス費3万+食費4万)

特別養護老人ホーム(特養)C

・初期費用:0円

・月額:8万円(居室料+食費+介護費の自己負担分含む)

注:実際は要介護度や所得、設備・サービス内容で変動しますので、必ず見学時に最新パンフ・見積もりを取得してください。

くまさんのコメント:
「東京23区は家賃相場が高いので、都心部の有料老人ホームは費用も跳ね上がりやすいです。私が見学をお手伝いした方は、『駅から徒歩5分』の好立地だけど、月額30万円越え…というケースを目の当たりにしました。もし『どうしても都心がいい』という希望があるなら、初期費用を抑えて月額を少し高めにするプランや、逆に初期にまとまった資金を投入して月額を軽減できるプランを検討して、家計と相談しながら落としどころを探すといいですよ。」

参照:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」から

費用内訳の詳細解説

1 初期費用(入居一時金・敷金・前払金)

・入居一時金:契約時に家賃相当額を前払い。返金保証の有無を要確認。

・敷金:住居契約の敷金と同様、一部返金される場合あり。

・前払金:数ヶ月~数年分を前払いし、未使用分を返金。月額費用を抑える手段として活用可。

くまさんのコメント:
「『前払金方式』を選ぶと、月額費用がぐっと抑えられるケースがあります。でも、そのぶん最初にまとまった資金が必要なので、手持ちの預金やご家族の協力をきちんとシミュレーションしておくことが大切です。私もかつて、『前払金を用意したら、貯金が一気に減って精神的に不安定になった』という方をご紹介した経験があります。返金保証の有無・返金条件は細かく確認しましょう。」

2 居室料・賃料

・部屋タイプ(個室/2人部屋/4人部屋)で価格が大きく変動。

・立地(駅徒歩〇分か、周辺環境)により上下。都心×個室なら+3〜5万円。

くまさんのコメント:
「ケアプランを考えるとき、『部屋の広さ』と『費用』のバランスはつねに悩ましいポイントです。私の友人が『部屋を広くしたら毎月の予算オーバーになり、結局すぐに引っ越しを検討することになった…』という話を聞きました。もし予算に余裕がない場合は、最初から『多少狭くても生活に支障のない範囲』を優先し、そのぶん余った予算をレクリエーション費やオプションにまわすなど、全体の満足度を上げる工夫をするといいですよ。」

3 食費・管理費・水道光熱費

・食費:施設提供の食事。栄養バランス配慮。1日3食で月4万~5万円。週末の特別メニューや行事食は別途オプション。

・管理費:共有スペースや設備維持のための費用。月1万~2万円。

・水道光熱費:含むケースと実費請求ケースあり。契約前に明確化を。

くまさんのコメント:
「実は、食費のボリュームや管理費の内訳って施設によって千差万別です。『週末の家族会食向けに別途オプションがあるけど、意外と高かった…』という声もよくあります。見学時には『実際に提供される食事のサンプル』をチェックし、『電気・水道が別料金なのか』を必ず確認してくださいね。私自身も、ある施設で水光熱費が別請求だったため、月末にびっくりしたことがあります(笑)。」

4 介護サービス費と保険外サービス費

介護サービス費:介護保険適用後の自己負担1割~3割。要介護度が高いほど加算費用も増加。

保険外サービス:美容サービス(散髪・マニキュア)、趣味教室、送迎サービスなどは追加契約で月数千~数万円。

くまさんのコメント:
「『お風呂上がりにやってもらう散髪が楽しみ』という利用者さんもいれば、『送迎サービスの頻度が多くて、思ったより費用がかさんでしまった…』というご家族もいます。保険外サービスは便利ですが、使いすぎると家計にじわじわ効いてくるので、『月にどこまでなら許容できるか』を家族で話し合っておくことが大切です。特に美容サービスは、『月1回まで無料』などキャンペーンを狙って利用するのもおすすめですよ。」

5 医療費・オプションサービス費

・医療費:訪問診療、薬剤費、検査費用。慢性疾患がある場合は月5万~10万円程度。

・オプション:リハビリ追加、介護用具レンタル、洗濯代など。必要に応じて契約。

くまさんのコメント:
「医療費は年齢や持病によって大きく変わります。私が以前相談を受けた方は、『週2回の訪問診療で、思った以上に月々の自己負担が膨らんだ』と嘆いていました。ご家族の健康状態を踏まえて、どの程度の医療連携が必要かを最初に見積もっておくと安心です。また、オプションでリハビリを追加すると、『歩行機能が改善して外出が増え、結果的に生活の質が向上した』というケースもありますので、一概に『無駄づかい』とは言えません。バランス感覚が大事ですね。」

 

公的制度をフル活用:負担軽減の具体策

1 医療費控除の適用範囲と申請方法

対象:特養・老健で支払った食費・居住費・介護費の一部、訪問診療費。

・控除上限:年間で10万円を超えた自己負担分。

・申請手順:確定申告書に医療費明細書を添付し提出。領収書は5年間保存。

くまさんのコメント:
「医療費控除は、意外に見落としがちなポイントです。『領収書が大量になって、確定申告のときに慌ててまとめた…』という話をよく聞きます。年間にいくら支払ったかを月ごとに記録しておくだけでも、申告時の手間がぐっと楽になりますよ。私も自分の親の分を代筆していたとき、『あれもこれも対象なんだ!』と驚いた経験があります。市販の家計簿アプリを活用して、医療費は専用フォルダで管理しておくと便利です。」

2 高額介護サービス費制度の仕組み

・概要:介護保険適用サービスの自己負担額が月の上限を超えた場合、超過分を後から支給。

・上限額:世帯の所得などに応じて月5万~9万円前後。

・申請方法:市区町村の窓口で申請。初回のみ、以降は自動適用。

くまさんのコメント:
「この制度を知らずに、『もう限界!』と自己負担を払い続けていたご家族を何人も見てきました。実際には、要介護度が上がるほどこの制度を活用できるケースが多いので、『もし自己負担額が急に増えたら、高額介護サービス費制度を確認する』ということをぜひ覚えておいてほしいです。私の知人も、最初『申請が面倒そう…』と不安がっていましたが、担当ケアマネージャーに相談したら手続き自体は意外とシンプルで、『もっと早く教えてほしかった!』と話していましたよ。」

3 介護保険の要介護認定で変わる自己負担割合

・要介護度1~2:軽度。介護サービスの利用額が抑えられる。

・要介護度3~5:加算が増えるが、リハビリや専門サービスが手厚い。

認定更新:原則2年ごと。介護度変化に応じて費用見直しを。

くまさんのコメント:
「要介護度が上がると見た目以上に自己負担が増えますが、そのぶん受けられるサービスの幅も広がるので“一長一短”です。『介護度アップ=費用アップ』ではなく、『介護度アップ=適切なケアが受けられる』という前向きな捉え方も大切です。私自身、ケアマネ時代に『要介護3に上がったら、理学療法士が毎週訪問してくれるようになり、歩行性能が改善した』という利用者さんを何人も見てきました。認定更新のタイミングで、今の介護度に合った見直しを忘れないようにしましょう。」

 

「年金だけで大丈夫?」収支シミュレーション

施設タイプ 月額費用(中央値) 平均厚生年金収入※ 収支バランス
特養・老健(公的) 10万円 14万円 +4万円/月(貯蓄も可能)
住宅型有料(民間) 15万円 14万円 −1万円/月(家族支援要)
介護付き有料(民間) 25万円 14万円 −11万円/月(貯蓄取り崩し)

※厚生年金平均受給額:令和6年度 約14万円

ポイント

・公的施設なら年金内でまかなえる可能性が高い。

・民間施設では家族負担や貯蓄取り崩し、学資や生活費の見直しが必要。

くまさんのコメント:
「このシミュレーション表は非常にわかりやすいですが、『うちの場合は年金受給額がもっと低い…』というご家庭も多いはずです。私の親世代も年金だけではこの数値に届かず、かつて私自身が『介護付き有料ホームだと毎月10万円の補填が必要』と診断され、家族会議を開いたことがあります。ですので、『自分たちの年金額をまず正確に把握する』ことが最優先です。その上で、『貯蓄崩しはいつまでならOKか』『子どもにどこまで協力してもらえるか』を家族で共有すると心の準備ができますよ。」

 

選び方のポイント&実践チェックリスト

家族で「優先順位」を共有

費用重視/サービス重視/立地重視 を明確化

実際に見学・体験入居を予約

施設の雰囲気、スタッフ対応、食事の味をチェック

ケアマネ・市区町村窓口に相談

介護度や所得に応じた最適プランを提案してもらう

コスト比較表を作成

エクセル等で「初期費用・月額費用・制度活用後の実質負担」欄を設け比較

契約前に「料金明細」を書面で確認

見積もりと食費や光熱費、介護度変化時の加算など細目をチェック

半年~1年ごとに再評価

介護度や家計状況の変化に合わせ、施設変更や契約内容見直しを検討

くまさんのコメント:
「チェックリストを作ると一気に安心感が生まれます。私も介護コンサルタントとして、多くのご家族に『まずはA~Gを全部済ませましょう』と紙に書き出してもらった結果、意思決定がスムーズになった経験が何度もあります。ただ、見学のときに『予想以上に居室が寒かった』『食事が思ったほど充実していなかった』と感じることもあるので、『自分の感覚を大切にする』ことも忘れずに。特に費用シミュレーション表だけでは見えない“生の声”を集めると、後悔しにくくなりますよ。」

 

まとめ:費用と快適性の最適バランスを見極める

①まずは費用構造を把握 → 初期費用・月額費用・追加費用を分解

②公的制度を最大活用 → 医療費控除・高額介護サービス費で実質負担を軽減

③年金・貯蓄とのバランス → 公的施設なら年金内で可能、民間は家族支援策を検討

④実際の見学と比較表作成 → 取得見積とパンフを並べ、自作表で可視化

⑤定期的な再評価 → 介護度や市場相場の変化に応じて見直し

ビジネスケアラーが抱える「仕事と介護」の二重負担を少しでも減らすには、事前の情報収集と計画が命です。この記事を参考に、ご自身とご家族のライフプランに合った老人ホーム選びを進めてみてください。安心して親御さんに過ごしていただくための一助になれば幸いです。

くまさん(介護と転職アドバイザー)
くまさん(介護と転職アドバイザー)

最後にお伝えしたいのは、『完璧な施設は存在しない』ということです。どこかを妥協しなければ、理想だけ高くて現実的な選択が見えなくなる可能性があります。私もこれまで多くの方の相談を受け、『やはりここがイチバンです!』と断言するより、『あちらのメリットとこちらのデメリットを踏まえて一家で納得できるほうを選びましょう』とお伝えしてきました。どうか、こまめに家族で話し合いながら、少しずつでも前に進んでいってくださいね。

 

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