「親の介護で仕事を続けられないかもしれない 」
「退職して介護に専念すべきか、本気で悩んでいる」
そんな不安を抱えていませんか?
しかし本当に「退職」しか選択肢はないのでしょうか?本記事を参考にして、今一度今後の選択を考慮してみてください。

この記事では、親の介護で退職を考えている会社員向けに、
介護離職後のリアル
実例1:52歳・製造業勤務 → 母の認知症介護
会社の製造ライン管理職として30年間勤務。3年前に母親が要介護3の認知症と診断され、自宅での介護に専念するため退職。
▽苦労ポイント
1.職務経歴の“空白期間”
・介護に専念していた3年間のブランクを説明するのに苦労。「何をしていたか」「なぜ復職までに時間がかかったか」を面接で納得させるのが難航。
2.技能、資格の陳腐化
・工場の自動化やIT化が急速に進んでおり、自身の生産管理スキルが時代遅れだと感じる場面が増加。
3.年齢による書類選考の壁
・「50代以上不可」と明記されていない求人でも、書類選考の通過率が10%以下に落ち込んだ。
▽その結果
半年かけて、同業界の派遣会社経由で「メンテナンス補佐」職を契約社員として獲得。
実例2:55歳・事務職 → 父の脳梗塞後の在宅介護
大手保険会社での事務職を勤続25年で退職。父親の脳梗塞リハビリを自宅で支えるため、介護休業では賄いきれず離職。
▽苦労ポイント
1.介護と面接の同時進行が困難
・午前中のデイサービス送り出しと午後のリハビリ補助で、夕方以降しか面接設定できず、企業側の「夜間面接は原則不可」というハードル。
2.派遣・パートへシフトせざるを得ない現実
・正社員募集には応募できず、仕方なく「週3日・扶養内可」のパート求人を中心に応募。待遇面で妥協。
3.給与水準の大幅ダウン
・月収30万円から15万円へ。家計の再設計が必要に。
▽その結果
デイサービス運営会社の経理補助(パート)に就業。家族介護と両立は叶ったものの、収入減は解消できず。
実例3:58歳・営業マネージャー → 配偶者のがん治療と介護
海外営業部門の管理職。妻の末期がんが判明し、治療・介護のため退職。
▽苦労ポイント
1.管理職経験の“持ち腐れ”感
・管理職経験を活かせる求人は少数を極め、書類では「年齢が高い」「コスト高」と判断されがち。
2.同世代の競合が多い
・50代前半~後半のミドル層が「部長クラス採用」を争う市場で、採用枠が年々減少傾向。
3.面接時の家庭状況の質問
・「介護と仕事の両立は可能か?」を過度に懸念され、家族のサポート体制を詳細に説明しなければならない煩雑さ。
▽その結果
一年かけて複数社を受けるも不採用続き。最終的に「コンサルティング」「非常勤講師」といったフリーランス的働き方へ転向。
実例4:50歳・介護福祉士 → 自身の介護経験を活かしたい
介護福祉士資格を持ち、特養で10年間勤務後、親のガン介護に専念。
▽苦労ポイント
1.資格の更新手続き漏れ
・資格更新の要件(研修受講)を離職中に失念し、再就職直前に慌てて再研修を受講。
2.介護職への再応募でも若手優先
・施設側は未経験若手を安価で採用したがり、経験者高齢者には「コストが合わない」と判断。
▽その結果
「訪問介護ヘルパー(登録型)」として時短勤務からスタート。
①職歴の空白・スキル陳腐化
②年齢による選考のハードル
③介護と面接日程・勤務時間の両立
④給与・雇用形態での希望と現実のギャップ
親の介護で会社を辞めたくなる理由
年間約10万人が介護を理由に離職し、その多くは40代~50代の働き盛り世代です(出典:厚生労働省「介護離職ゼロの実現に向けて」)。
この記事では、親の介護で退職を考えている会社員の方に向けてわかりやすく解説します。
・仕事を続けながら介護と両立するための具体的な選択肢
・利用可能な公的・民間の支援制度
・同じ立場の当事者が語るリアルな声

まずは、「辞める前」に知っておきたいポイントから確認していきましょう。
①介護はある日突然始まる
親の介護は「そのうち来る」と思っていても、実際には突然始まることが多いものです。
たとえばこんなケースが典型です:
・夜中に親が転倒し、骨折して入院 → 退院後に要介護認定
・認知症が進行して徘徊が始まり、目が離せなくなる
・病気や後遺症で身体介助が必要になる
その瞬間から、日常の生活が一変します。
仕事・家事・育児に加えて、毎日の介護対応が必要となり、「このまま仕事を続けるのは無理かもしれない」と感じる人が多くなります。
②家族内での介護負担が偏る
たとえ兄弟姉妹がいても、なぜか自分にだけ負担が集中することは少なくありません。
・「同居してるんだから頼むよ」
・「仕事してない(またはテレワークだから)時間あるでしょ」
・「長男(長女)なんだから当然でしょ」
こうした期待や無言のプレッシャーによって、会社員にもかかわらずフルタイム介護を担わざるを得ないという状況になってしまうこともあります。
介護離職の現実:辞めた後に待つリスク
①金銭的リスクが大きすぎる
親の介護のために仕事を辞めると、当然給与がゼロになります。
その一方で、介護には以下のような費用がかかります:
・デイサービス:1回あたり500〜1,500円程度(自己負担分)
・訪問介護:30分で300〜500円程度(1日2回以上利用するケースも)
・介護用品(おむつ・手すりなど):月額5,000円〜20,000円
・施設入所:月額15万円〜30万円以上
つまり、「収入ゼロで支出増」という、非常に厳しい経済状況に陥ることになります。
②再就職は思った以上に難しい
「介護が落ち着いたらまた働けばいい」そう考えて退職する方も多いですが、現実には再就職は容易ではありません。
・年齢の壁(50代以降の求人は少ない)
・キャリアブランクによる不利
・フルタイムでの勤務が難しい状態のまま
結果として、「もっと働いておけばよかった」「退職しなければよかった」と後悔する人も少なくありません。
退職前に検討すべき5つの選択肢
1. 介護休暇を活用する
・介護休暇は、年間5日間(対象家族が2人以上なら10日間)まで取得可能です。
・1日単位、あるいは半日や時間単位で使えるため、通院の付き添いや急な対応に便利。
・法律で定められており、会社が拒否することはできません(※給与の有無は就業規則により異なる)。
2. 介護休業制度を利用する
・介護休業は、要介護状態の家族1人につき最大93日間(3か月)まで取得可能です。
・さらに雇用保険に加入していれば、「介護休業給付金」が支給されます(給与の67%)。
・この期間中に、ケアプランを整備し、今後の働き方を見直す猶予が得られます。
3. 働き方を柔軟に変える
勤務先に制度があれば、以下の働き方の調整が可能です:
・時短勤務(正社員のまま1日6時間など)
・フレックス勤務(通院付き添い後に出勤)
・テレワーク・在宅勤務(介護の合間に仕事)
人事部や上司と相談し、勤務形態を柔軟に変えることで退職を回避する道も開けます。
4. 外部サービスを最大限活用する
ケアマネジャーに相談することで、公的介護サービスを組み合わせた支援プランを作成できます。たとえば:
・デイサービス
・訪問介護(ヘルパー)
・ショートステイ(1泊〜1週間)
・地域包括支援センターでの無料相談
これらを使えば、介護の負担を大幅に軽減できます。
5. 家族と「役割分担」を再定義する
兄弟姉妹・配偶者・親戚と早めに話し合い、以下のような分担の再調整が可能です。
・「実務」:同居している人
・「お金」:余裕のある兄弟
・「手続きや連絡」:リモート対応できる人
全てを一人で抱えず、周囲を巻き込むことがカギです。
介護と仕事を両立した会社員たちの実例
体験談1:介護休業を活用し復職(50代女性)
・母の大腿骨骨折をきっかけに、3か月の介護休業を取得。
・その間にケアマネと連携し、デイサービス・ヘルパー利用体制を構築。
・復職後は、時短勤務+週2回のテレワークで継続勤務。
体験談2:兄弟と負担分担し退職を回避(40代男性)
認知症の父と同居し始めたが、兄弟で以下のように役割分担を明確化:
・自分:ケアマネ・施設見学・定期通院
・弟:経済的支援(月3万円の仕送り)
・妹:土曜のヘルパー代わりに訪問
家族の連携がうまくいったことで、退職をせずに介護と仕事を両立できた。
体験談3:早期退職→後悔(60代男性)
・55歳で早期退職し、介護に専念。
・しかし要介護度は軽度で、自宅介護が数年続くことに。
・再就職も難しく、貯金も切り崩すことになり、「もっと制度やサービスを調べておけばよかった」と後悔。
まとめ:介護で退職を選ぶ前に、必ず立ち止まって考えよう

「もう限界」「仕事どころではない」そう感じることも当然です。しかし今は、仕事を続けながら介護に対応する手段が以前より増えているのも事実です。
最後に、退職を選ぶ前にぜひ試してほしいアクションをまとめます。
・【相談】ケアマネ・地域包括支援センターに話す
・【確認】介護休暇・休業制度を会社に確認
・【調整】家族で分担と役割を話し合う
・【準備】金銭面・介護期間のシミュレーションを行う
「退職しかない」という思い込みから、あなた自身を解放する第一歩として、本記事が役立てば幸いです。
関連リンク
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▽介護について相談したい
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