年金だけで賄える?老人ホームの総費用まとめガイド

働きながら親の介護を担う「ビジネスケアラー」にとって、親が老人ホームへ入居した際「費用がどのくらいかかるのか?」は大きな心配事です。

施設選びに失敗すると想定外の費用負担で家計が圧迫され、年金や預貯金ではお金が足りなくなることも。

そうするとご家族が援助を続けないと、入居生活が困難になってしまうケースもあります。

本記事では「老人ホーム 費用」のキーワードを軸に、初期費用・月額費用・追加費用の内訳から、施設別の相場比較公的制度を活用した負担軽減策年金や貯蓄とのバランスまでを網羅的に解説します。

Dr.キャリアと介護のアドバイザー

読み終えれば、自分と親に最適な施設選びのポイントがわかります。

介護にはどのくらい費用がかかる?

多くのビジネスケアラーが直面する悩みは「仕事と介護の両立」です。親の介護に伴う負担が大きくなって、勤務時間を減らすか、または転職するかという選択肢が浮上し、結果的には収入減少のリスクを招きかねません。それでは介護にかかる費用について、まずはどのような点に気をつけなけらばならないのでしょうか。

・施設の種別ごとに費用が違います ⇒ 同じ「有料老人ホーム」と言っても、初期費用の有無や金額そのもの、または定期的に発生する月額費用がまったく違います。

・計画的な資金準備が不可欠 ⇒ 年金収入だけでは足りないケースが大半です。預貯金の切り崩しや家族支援なども想定しておいた方が良いでしょう。

費用の基本と「公的施設 vs 民間施設」

2-1. 費用の3大要素

1)初期費用

・入居一時金/敷金/前払金

・30万~数百万円(施設による)

2)月額費用

・居室料(賃料)、食費、管理費、介護保険自己負担分など

・5万~30万円前後

3)追加費用

・医療費、レクリエーション費、嗜好品代、オプションサービスなど

2-2. 公的施設 vs 民間施設

比較項目

公的施設(特養・老健等)

民間施設(有料老人ホーム等)

初期費用

0円~数万円

10万~数百万円

月額費用

5万~20万円程度(所得に応じ軽減あり)

10万~30万円以上

申込待機リスク

高い(長期待機・要介護度の条件あり)

低い(空室があれば即入居可)

サービス内容

医療・リハビリ主体、共同生活

食事・レクリエーション・設備が充実

快適性・立地

地方・郊外中心

都心部・駅近も多く選択肢豊富

 3.施設別コスト比較 初期費用&月額費用相場

施設種類

初期費用相場

月額費用相場

主な特徴

介護付き有料老人ホーム

30万~数百万円

20万~30万円

24時間介護+医療連携体制完備。食事やレクリエーションも充実。

住宅型有料老人ホーム

10万~数百万円

10万~20万円

居室を賃貸、介護は外部サービス利用。費用を抑えたり増やしたり調整可能。

サービス付き高齢者向け住宅

10万~30万円

10万~30万円

賃貸住宅に生活支援サービスをセット。緊急通報や生活相談が受けられる。

グループホーム

3万~60万円

8万~25万円

認知症対応型少人数制ユニット。家庭的な共同生活。

特別養護老人ホーム(特養)

0円

5万~18万円

公的施設。要介護3以上対象。待機期間長いが費用は最も低廉。

介護老人保健施設(老健)

0円

6万~20万円

リハビリ重視。家庭復帰を目指す中間的ケア施設。

3-1. ケーススタディ:東京23区内の相場例

1)介護付き有料老人ホームA社

・初期費用:200万円(返金保証なし)

・月額:27万円(家賃15万+管理費3万+食費4.5万+介護費4.5万)

2)住宅型有料老人ホームB社

・初期費用:50万円(前払金、一部返金あり)

・月額:15万円(家賃8万+サービス費3万+食費4万)

3)特養C

・初期費用:0円

・月額:8万円(居室料+食費+介護費の自己負担分含む)

注:実際は要介護度や所得、設備・サービス内容で変動しますので、必ず見学時に最新パンフ・見積もりを取得してください。

4.費用内訳の詳細解説

4.1 初期費用(入居一時金・敷金・前払金)

・入居一時金:契約時に家賃相当額を前払い。返金保証の有無を要確認。

・敷金:住居契約の敷金と同様、一部返金される場合あり。

・前払金:数ヶ月~数年分を前払いし、未使用分を返金。月額費用を抑える手段として活用可。

4.2 居室料・賃料

・部屋タイプ(個室/2人部屋/4人部屋)で価格が大きく変動。

・立地(駅徒歩〇分か、周辺環境)により上下。都心×個室なら+3〜5万円。

4.3 食費・管理費・水道光熱費

・食費:施設提供の食事。栄養バランス配慮。1日3食で月4万~5万円。週末の特別メニューや行事食は別途オプション。

・管理費:共有スペースや設備維持のための費用。月1万~2万円。

・水道光熱費:含むケースと実費請求ケースあり。契約前に明確化を。

4.4 介護サービス費と保険外サービス費

介護サービス費:介護保険適用後の自己負担1割~3割。要介護度が高いほど加算費用も増加。

保険外サービス:美容サービス(散髪・マニキュア)、趣味教室、送迎サービスなどは追加契約で月数千~数万円。

4.5 医療費・オプションサービス費

・医療費:訪問診療、薬剤費、検査費用。慢性疾患がある場合は月5万~10万円程度。

・オプション:リハビリ追加、介護用具レンタル、洗濯代など。必要に応じて契約。

5.公的制度をフル活用:負担軽減の具体策

5.1 医療費控除の適用範囲と申請方法

対象:特養・老健で支払った食費・居住費・介護費の一部、訪問診療費。

・控除上限:年間で10万円を超えた自己負担分。

・申請手順:確定申告書に医療費明細書を添付し提出。領収書は5年間保存。

5.2 高額介護サービス費制度の仕組み

・概要:介護保険適用サービスの自己負担額が月の上限を超えた場合、超過分を後から支給。

・上限額:世帯の所得などに応じて月5万~9万円前後。

・申請方法:市区町村の窓口で申請。初回のみ、以降は自動適用。

5.3 介護保険の要介護認定で変わる自己負担割合

・要介護度1~2:軽度。介護サービスの利用額が抑えられる。

・要介護度3~5:加算が増えるが、リハビリや専門サービスが手厚い。

認定更新:原則2年ごと。介護度変化に応じて費用見直しを。

「年金だけで大丈夫?」収支シミュレーション

施設タイプ

月額費用(中央値)

平均厚生年金収入※

収支バランス

特養・老健(公的)

10万円

14万円

+4万円/月(貯蓄も可能)

住宅型有料(民間)

15万円

14万円

−1万円/月(家族支援要)

介護付き有料(民間)

25万円

14万円

−11万円/月(貯蓄取り崩し)

※厚生年金平均受給額:令和6年度 約14万円

ポイント

・公的施設なら年金内でまかなえる可能性が高い。

・民間施設では家族負担や貯蓄取り崩し、学資や生活費の見直しが必要。

選び方のポイント&実践チェックリスト

1)家族で「優先順位」を共有

費用重視/サービス重視/立地重視 を明確化

2)実際に見学・体験入居を予約

施設の雰囲気、スタッフ対応、食事の味をチェック

3)ケアマネ・市区町村窓口に相談

介護度や所得に応じた最適プランを提案してもらう

4)コスト比較表を作成

エクセル等で「初期費用・月額費用・制度活用後の実質負担」欄を設け比較

5)契約前に「料金明細」を書面で確認

見積もりと食費や光熱費、介護度変化時の加算など細目をチェック

6)半年~1年ごとに再評価

介護度や家計状況の変化に合わせ、施設変更や契約内容見直しを検討

まとめ:費用と快適性の最適バランスを見極める

1)まずは費用構造を把握 → 初期費用・月額費用・追加費用を分解

2)公的制度を最大活用 → 医療費控除・高額介護サービス費で実質負担を軽減

3)年金・貯蓄とのバランス → 公的施設なら年金内で可能、民間は家族支援策を検討

4)実際の見学と比較表作成 → 取得見積とパンフを並べ、自作表で可視化

5)定期的な再評価 → 介護度や市場相場の変化に応じて見直し

ビジネスケアラーが抱える「仕事と介護」の二重負担を少しでも減らすには、事前の情報収集と計画が命です。この記事を参考に、ご自身とご家族のライフプランに合った老人ホーム選びを進めてみてください。安心して親御さんに過ごしていただくための一助になれば幸いです。

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