
私の父は要支援2でまだそれほど心配していないのですが、それでも一人で過ごさせるのがちょっと不安に思えるときがあります。母もたまには友人と旅行に行きたいらしいのですが「お父さんが心配だから」と実現できずにいます。そのことを友人に相談したら「しょーたき!?」が良いかもと勧められたのですが、その「しょーたき」について教えてもらえますか?

こんにちわ、アドバイザーのくまさんです。ママ美さんがおっしゃる「しょーたき」とは「小規模多機能型居宅介護(通称:しょうたき)」と呼ばれる介護サービスです。ママ美さんのお父様に適したサービスかもしれませんので、ここでサービス内容や費用について説明していきますね。
小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護?ずいぶんとわかりづらいサービス名ですね。これを略して「しょうたき」というのですね。ちなみに中身についてはどんなサービスなのでしょうか。

ちょっと小難しい説明になりますが、小規模多機能型居宅介護は2006年の介護保険法改正で創設された“地域密着型サービス”の一つで、ひとつの事業所で「①通い(通所介護、デイサービス)」「②訪問(訪問介護)」「③泊まり(ショートステイ)」をまとめて提供しているのです。
おもに施設への「通い」を中心としたサービスになりますが、「通い」「訪問」「泊まり」をまとめて計画して、ご利用者とご家族の暮らしに合わせていつでも切り替えが可能になっています。これらのサービスの調整についてはケアマネジャーがすべて管理してくれるので、突然の変更でもスムーズに対応してもらえるのがメリットと言えます。
サービス | 主な内容 | 定員・登録者数 |
---|---|---|
①通いサービス | 事業所での食事・入浴・リハビリ・レクリエーション | 定員15名/日以下登録者29名以下 |
②訪問サービス | 自宅での掃除・調理・服薬管理・見守り | ― |
③泊まりサービス | 短期宿泊(ショートステイに近い)夜間の緊急対応も可 | 定員9名/日以下 |
これら3つの介護サービスは小規模多機能型居宅介護が出来るまでは、それぞれ別の事業所と契約しなければならず、併用したいときに手続きが面倒でした。しかし小規模多機能型居宅介護なら、ひとりのケアマネジャーが介護プランを設計してくれます。また、利用回数や時間に制限なく月額定額制で利用できる点も大きな特徴です 。

ちなみに、これまで利用していた介護サービス「訪問介護」「通所介護(デイサービス)」「ショートステイ」との併用は出来ませんのでご注意くださいね。
通所介護(デイサービス)との違い
通所介護(デイサービス)
利用スケジュールやプログラムがあらかじめ決まっており、曜日・時間を固定して通うのが基本。入浴やレクリエーション、機能訓練など、決められたメニューをまとめて受ける。
小規模多機能型居宅介護の「通い」
利用日・回数・内容を自由に調整可能。「今日は入浴だけ」「明日は昼食後1時間だけ見守り」など、個別のニーズに合わせてサービスを設定できる。定員18名以下の小規模体制で、一人ひとりに寄り添った対応がしやすい。
ポイント
決まったプログラムをまとめて受けるか、必要最小限のサービスをピンポイントで受けるかの違いです。
訪問介護との違い
訪問介護
毎週何曜日の何時から何分、と時間が固定されてサービス提供。基本は生活援助(掃除・調理・買物)や身体介護(入浴・排泄)など、定型メニュー。
小規模多機能型居宅介護の「訪問」
日によって時間や内容を細かく変更可能。数分の見守りだけ、急な体調変化に合わせた夜間のサポート、買い物同行など、状況に応じたきめ細かい対応。
ポイント
定型的な訪問か、「今日ここだけお願いしたい」に応える柔軟型かの違いです。
要支援2の父にちょうどいい理由

父の場合、まだそれほどの介護のケアは必要ないのかもしれませんが、それでも日々の見守りや家事サポートなどの生活支援はして欲しい、そんなニーズにも対応してくれるのでしょうか?

要支援1・2の人に対しても「介護予防小規模多機能型居宅介護」という枠組みがあり、生活機能の維持、向上を目的に設計されています。
たとえば要支援2の認定を受けた方は、①日常生活で「掃除」「調理」「買物」「服薬管理」など部分的なサポート、②転倒や体力低下によるリスクを減らしながら、安全に自立を支援、といった予防サービスを受けることができます。もう少し具体的に申しますと「通いで定期的な機能訓練/口腔ケア」「訪問で朝晩の安否確認+掃除や洗濯」「家族が旅行の時に泊まりで一晩ステイ」といったプランを月額定額で自由に組み替えることができます。

ママ美さんのお父様のように要支援2の段階で試すと、小規模多機能型居宅介護のサービスを利用することでお父様の介護度の悪化を抑え、そしてご家族の安心感も得られますよ!
サービス利用の流れと申し込み方法

小多機(しょうたき)に興味が湧いてきました。うちの父や母のことを考えると、最適なサービスかもしれません。小多機(しょうたき)を始めたいとき、まず何をすれば良いのでしょうか?

まずは、地域包括支援センターのケアマネジャー(軽度の要支援の人)か、居宅介護支援事業所のケアマネージャー(要介護申請済み)に相談してみましょう。ママ美さんのお父様の場合は地域包括支援センターになりますね。
ケアマネとの初回面談
①ご本人の状態確認やご家族へご希望等のヒアリング
②利用イメージ(通い頻度・訪問時間帯・泊まり回数)をすり合わせ
事業所見学・事前打ち合わせ
①プログラム内容(体操・レク)や設備、送迎ルートの確認しましょう
②定員(通い15名/泊まり9名)やスタッフ配置体制のチェックしましょう
契約・開始手続き
①ケアプラン(介護予防計画)策定
②利用契約書を締結し、利用料・キャンセル規定・加算項目を確認
定期的なプラン見直し(3〜6ヶ月ごと)
ご本人の体調やご家族の都合に応じて、サービス内容を見直し

サービス見直しの際、役所への申請や手続きはケアマネが代行してくれるので、ママ美さんご家族の負担は最小限で済みます。まずは気になる事業所に「体験利用」を申し込んでみてくださいね。
ご利用前に押さえておきたいチェックポイント
事業所を選ぶ際には、以下の点について事前に見ておくべきです。
チェック項目 | 詳細内容 |
---|---|
立地・送迎ルート | 自宅からの所要時間、道路状況、送迎車の乗降場所 |
定員とスタッフ比率 | 常勤・非常勤の配置状況、看護師在籍の有無 |
プログラムの中身と頻度 | 機能訓練、レクリエーション、地域交流イベントの充実度 |
料金体系の透明性 | 基本定額+加算項目+実費の内訳が明確か。キャンセル料や超過宿泊時の規定 |
雰囲気と清潔感 | 見学時の匂いや設備の保守状況、利用者・スタッフの表情ややりとり |

見学時は「一日のスケジュール」「非常時の対応」「家族が外出中のケア体制」など、具体的な場面を想定して質問をすると良いでしょう。
利用料金の目安
小規模多機能型居宅介護の基本料金は月額制で、料金が分かりやすいのがポイントです。一方で月額料金は要介護度や地域によって異なっていたり、別途必要となる費用もありますのでご注意ください。
介護度 | 月額利用料(1割負担の目安) |
---|---|
要支援1 | 約 3,450 円/月 |
要支援2 | 約 6,972 円/月 |
要介護1 | 約 10,458 円/月 |
要介護2 | 約 15,370 円/月 |
要介護3 | 約 22,359 円/月 |
要介護4 | 約 24,677 円/月 |
要介護5 | 約 27,209 円/月 |
上記の表の金額目安には、通いサービス(デイサービス)、訪問サービス、泊まりサービス(ショートステイ)を組み合わせた基本利用料が含まれます。また、地域や事業所ごとに単価(単位数×地域単価)が異なるため、あくまで全国的な目安になります。そして別途必要となる主な費用の目安は以下の通りです。こちらの金額もあくまで目安として参考にしてください。
費目 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
朝食 | 370円/食 | |
昼食 | 600円/食 | |
夕食 | 670円/食 | |
おやつ | 110円/回 | |
3食+おやつ利用 | 1,750円/日 | 30日で52,500円 |
宿泊居住費 (泊まりサービス利用時) |
約2,700円/泊 | |
初期加算 (登録後30日間) |
30単位/日 | 約31円/日 |
看取り連携加算 | 64単位/日 | 約66円/日 |
口腔・栄養スクリーニング加算 | 20単位/回 | 約21円/回 |
各種サービス強化加算 | – | 処遇改善加算、科学的介護推進体制加算など |
本例は自己負担割合「1割負担」の場合でシミュレーションをしています。所得段階に応じて2割・3割負担になることがありますので、あくまで目安として参考にしてください。
小規模多機能型居宅介護のデメリット。利用前に気をつけたい4つのポイント

くまさん、よろしくお願いします。じつはうちの父が介護サービスを利用しているのですが、小規模多機能型居宅介護を利用することデメリットがあるようでしたら、利用を検討したいと思っています。

ここで「小規模多機能型居宅介護」の落とし穴についても注意しておきましょう。小規模多機能型居宅介護には便利なことが多い反面、見落としがちな注意点もあるのです。パパ夫さんの例を参考にしながら、わかりやすく解説しますね。
他サービスとの併用に制限があるって本当?

うちの親が、デイサービスに週2回通ってるのですが、小規模多機能型居宅介護に変えたら、今の介護サービスって使えなくなるのでしょうか?

すごく良い質問ですね。じつはそこが要注意ポイントなのです。小規模多機能型居宅介護は「通い・訪問・宿泊」がセットで提供されるサービスですが、同じような他の介護サービスについては併用できないことが多いのです。これがいわゆるデメリットと言えるでしょう。下の表で確認してみてください。
併用できるサービス | 併用できないサービス |
---|---|
訪問看護 | デイサービス |
訪問リハビリ | 訪問介護 |
居宅療養管理指導 | 訪問入浴 |
福祉用具貸与 | デイケア |
住宅改修 | 居宅介護支援(ケアマネ) ショートステイ |
小規模多機能型居宅介護を利用することで、これまで使っていた介護サービスが使えなくなる可能性がありますので、事前にケアマネージャーさんと相談しておくと良いでしょう。
利用しなくても“月額費用”はかかります

費用についての確認です。小規模多機能型居宅介護は一定の月額費用がかかると聞いています。もし親が風邪をひいて1週間サービスを使えなかった時、その時の料金はどうなるのですか?少しお金が戻ってきたりするのですか?

小規模多機能型居宅介護は月額定額制なので、利用しない時期があったとしてもつねに費用は発生します。ご利用を検討する段階で、月にどれくらい使うかを想定して、他の介護サービスとのコスパを比較することも大事ですよ。
サービスの利用頻度が多くても少なくても、毎月要介護度に応じた支払いが必要になります。つまり、サービス利用頻度がそれほど多くない方にとっては、費用だけをみるとデメリットが生じると言えます。
ケアマネジャーを変更する必要がある

ケアマネージャーも変更しないといけないと聞いたことがあります。うちのケアマネさんすごく頼りになる方で、できればこのまま続けてほしいのですが。それでも変えないとダメですか?

そうなんです、このケアマネ変更こそが人によっては、小規模多機能型居宅介護を利用する際の最大のデメリットかもしれません。
介護保険サービスを利用されている方の場合、既に担当のケアマネージャーがいるはずです。しかし小規模多機能型居宅介護の利用を始めるとなると、その事業所に所属するケアマネージャーへの担当変更が必要になるのです。これまでの担当ケアマネージャーと信頼関係ができていた方にとっては、ケアマネージャーの変更はデメリットと言えます。

慣れ親しんだケアマネさんとのお別れはつらいですが、新しく担当となるケアマネージャーさんとも少しずつ信頼関係を築いていきましょう。
希望しても“定員オーバー”で使えないことも…

えぇ…?定員オーバー?施設って、予約すればいつでも使えると思ってました!

そうですよね、定員のことまで想定していなかったですよね。小規模施設には定員制限がありまして、特に「泊まり」には予約が集中する傾向があります。
小規模多機能型居宅介護は、小規模サービスに位置づけられているため、1日あたりの利用定員が29名以下とされています。また、通いの場合は15名以下、宿泊は9名以下と決まっており、利用定員が上限になると利用できません。
以上、小規模多機能型居宅介護のデメリットを事前に理解してからのご利用の検討をするようにしてください。
まとめ:家族みんなが笑顔になる小規模多機能型居宅介護
それでは、最後にまとめとして週7日のシミュレーションをしてみましょう。「通い」「訪問」「泊まり」を組み合わせることで、ご家族がご自身のプライベートをしっかりと確保できることでしょう。
曜日 | 通い(デイ) | 訪問 | 泊まり | ポイント |
---|---|---|---|---|
月 | ○(入浴・口腔ケア) | 午前は機能訓練、午後はレクリエーションで体力維持 | ||
火 | ○(見守り・掃除) | 朝晩の安否確認と家事サポートで“ひとり”の時間を短縮 | ||
水 | ○(おやつ・機能訓練) | 小規模ならではの個別対応で父のQOL向上 | ||
木 | ○(泊まり) | 母が友人と旅行、父は顔なじみスタッフと安心の夜 | ||
金 | ○(体操・イベント) | 週末に向けた疲労ケア+家族への共有ノートで状態把握 | ||
土 | ○(買物代行・調理) | まとめ買い・調理はスタッフにおまかせ | ||
日 | 家族でケア&交流 | ママ美さんが実家で父の状況確認。週の振り返りと次週の調整 |
ショートステイに関しては、まずその雰囲気になれることが大切ですので、最初は週1泊からスタートしましょう。
- 3サービスを一括契約で手続き簡素化&信頼関係が続く
- 要支援2向けプランで予防ケア+見守りを実現
- 月額定額制+加算・実費の明瞭化で費用もコントロール
- 週1泊トライアルから始めて、家族の予定に合わせて調整

ママ美さんのご家族の場合、小規模多機能型居宅介護のサービスを上手に活用すれば、お父様の安心、お母さまのリフレッシュ、そしてママ美さんの仕事と介護の両立と、すべてがうまく進むことでしょう。
【著者情報】くまさん(介護と転職のアドバイザー)
年齢 | 在籍期間 | 在籍企業 |
---|---|---|
22~34歳 | 10年 | 金融機関勤務(大手銀行→米系証券会社) |
35~45歳 | 10年 | 大手転職エージェント(国内大手→外資系大手) |
45~50歳 | 5年 | 介護系ベンチャー企業 |
50歳~ | 5年以上 | 独立して介護と仕事のコンサルタント |
年 | 主な出来事 | |
---|---|---|
1970年 | 0歳 | 神奈川県横浜市に生まれる。 |
1992年 | 22歳 | 大学卒業後、現みずほ銀行に入行(法人営業担当)。 |
2000年 | 30歳 | 米系証券会社に転職し、主に債券を扱うトレーダーを行う。 |
2005年 | 35歳 | 大手転職エージェントにキャリアチェンジ(国内大手と外資系大手の2社経験)。キャリアアドバイザーとしての経験もあり、求職者のお気持ちに寄り添うカウンセリングを得意とした(若手層からミドル層の転職支援)。 |
2015年 | 45歳 | IPO直前の介護ベンチャー企業に転職し、介護事業者の収益改善コンサルティングに従事。有料老人ホームの経営や人事コンサルタント業務を行う。また、一般ユーザー向けには介護の相談窓口サービスを提供し、とくに仕事と介護の両立に悩む会社員をサポートしてきた。 |
2020年 | 50歳 | 独立し「Dr.介護と仕事のアドバイザー」として企業制度設計や講演、情報発信を開始。その流れで本ブログを執筆中。現在に至る。 |
No. | 得意分野 |
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1 | 介護と仕事の両立支援(一般ユーザー向け) |
2 | ミドル・シニア層(30代~50代)のキャリア再構築・転職支援(一般ユーザー向け) |
3 | 介護人材の採用・定着(介護事業者向け) |
4 | 介護事業者の経営支援(介護事業者向け) |
5 | ダイバーシティ経営(介護離職防止)(介護事業者向け) |
6 | 施設(老人ホーム)選びのアドバイス(一般ユーザー向け) |
7 | 50代以降のキャリア再デザイン(一般ユーザー向け) |