
こんにちは、くまさんです。今日は、“娘さんお2人”と“父親”の3人で母親の介護を支えるご家庭のリアルな悩みを、一緒に解決していきましょう。姉妹、そしてお父さんのあいだでお母さまの介護負担に偏りが出てしまうと、家族みんなが疲れてしまいますからね。

はい…私も妹も子どもがいて仕事や家事がある中での介護なんです。家族で負担に偏りがあると、正直やがてはメンタルも体力もキツくなると思ってます。できる限りうまく分担したいです。家族の仲が悪くなるのも嫌なんです。

それでは今回「介護の悩み相談」にお問い合わせ頂いた篠原さんのご家族構成について紹介しますね。今回の相談内容は、72歳になる母親の介護を、どのように家族で分担しながらサポートしていくかについての相談です。
- 智子さん(姉/42歳・会社員)
・実家まで往復2時間、今は週2日の訪問でギリギリの生活
・小学生の子ども2人を育てつつフルタイム勤務 - 裕美さん(妹/40歳・専業主婦)
・“できるだけ母親を見ていたい”タイプで週5日実家に通っている
・幼児の育児と両立しながら無理をしてしまう頑張り屋さん - 一郎さん(父/75歳・自営業)
・仕事についてはある程度は自宅で作業ができるはずだが、毎日夕方まで事務所に行ってしまう
・介護には消極的で“仕事に逃げる”傾向にある - 美智子さん(母/72歳・要支援2)
・ある程度自立した生活はできるものの、掃除やゴミ出し、料理などに不安がある
・娘たちが来ないと不安で落ち着かない時が多くなっている
家族それぞれの介護へのおもい

それでは、智子さん、裕美さん、よろしくお願いします。介護のストレスを軽減させるには、まずは皆さんの今の介護に対するおもいを正直に話してもらうことが必要になります。それではまずは智子さん、智子さんの今の介護状況をもう少し詳しくお聞かせください。

実家の父と母は二人で暮らしています。父は自営業をしていまして、日中はほとんど事務所へ出てしまいます。私は片道1時間かけて週2日訪問、妹は週5日実家に通っています。私の方が実家に行く回数が少ないせいか、心の奥底では妹に申し訳ないとおもう気持ちが強くて、いつも心のどこかでうしろめたさを感じてしまうのです。

私も週5日は頑張りすぎなのかもしれません。子どものお迎えや家事で時間がありません。心も体も限界になる日が近いかもしれませんが、それでも母のことをおもうと何かしないといけないといった気持ちが強くて、週5日はどうしても実家に足を運んでしまうのです。

智子さんのお気持ちは“家族への責任感”の表れですが、このまま考えすぎる日が続きますと、最悪の場合精神的なダメージにつながることもありますのでご注意ください。
介護の負担について考える

介護の負担には大きく分けて、3つの負担があると言われています。智子さんと裕美さんは、このなかでどれが最も重いと感じていますか?
負担の種類 | 内容の具体例 |
---|---|
物理的負担 | ・介護施設や実家までの往復時間・買い物や通院の付き添い・食事や排せつなど身体介助にかかる時間 |
精神的負担 | ・「自分しか頼れない」という責任感・仕事や家族との両立ができないことへの罪悪感・介護に関する将来不安やストレス |
調整負担 | ・他の家族やサービス事業者との連絡・スケジュール調整・仕事や私生活との予定のすり合わせ・介護サービスの申請や手続き対応 |

物理的には週2回の往復、妹の前では言いづらいのですが精神的には“妹より少ない”という後ろめたさを感じてしまいます。調整については、今のところ私がすべて担っています。

私は母のためにも“もっとやらなきゃ”という気持ちが抜けません。

まずは今の負担を書き出してみるとよいでしょう。あらためて“誰が何をしている”について確認して、“誰がこの部分を担当しようか”といったことを話し合ってみるのはいかがでしょうか。
具体的な対話&解決策
Q1:父親にはどう声をかければいい?

お父さん、最近ちゃんとお母さんと向き合ってる?お母さんのことどう思ってるの?

このような場合は、“事実→気持ち→お願い”の順に話すと、誤解なく伝わります。
- 事実
智子さん:「平日の昼間、あまり体調が良くないお母さんが、一人で過ごす時間が長いように感じるんだ。」 - 気持ち
智子さん:「体調も良くないだろうから、お母さんが寂しい思いをしていないか心配で…。」 - お願い
智子さん:「週に何回かでよいから、仕事場から電話して声をかけてくれたらお母さんも安心するし、私も助かるの。」
Q2:妹にはどのように調整を頼む?

私も正直週2日が限界で。妹とも今後うまくやって行くには、どのように分担したらいいですか?

このようなケースでは、“見える化+ルール化+(裕美さんへの)感謝”で進めてみましょう。まずはおおよその役割を決めることが良いでしょう。
- 予定を並べてみる
手帳のカレンダー等を置き、実家へ行くべき日を色分けして書く。 - 週ごとのローテーションを決める
例)月・水を智子、火・木・金を裕美、というパターンを作成。 - 感謝のひと言を添える
そして妹の裕美さんへは「いつも本当にありがとう。あなたのおかげでお母さんも安心しているよ」と言葉に出しましょう。最初はローテーション日以外にも、裕美さんは実家に行きたがると思います。ただし、最初に実家に行く日を互いに決めておけば、たとえ裕美さんの回数が増えてもお互いに不満が出ることは無くなっていくことでしょう。
Q3:お父さんにもお願いできることを考える

お父さんは、そもそも何をすればいいかわからないと言うので、一緒に話してみたいです。

家族らしい提案として、簡単で継続しやすい以下の3つを試してみてはいかがでしょうか。
- 日々の健康チェック:朝、テーブルに体温計を用意して、お母さんに体温を測ってもらう。
- お薬タイムの声かけ:お母さんに「薬の時間だよ」と声かけをしてもらう。
- 短い散歩同行:週1回で良いので、近所を10分ほど一緒に散歩してみる。
Q4:智子さん自身のメンタルケア

介護の日は帰宅すると疲れ切って、これがいつまで続くのか考え出すとどんよりした気持ちになる事もあって、夜眠れない日もあります。

そうですよね。介護は終わりがいつになるのかが見えないので、どうしても不安になってしまうものです。まずは自分を労(いた)わる時間も計画に組み込んでくださいね。
- 5分間リセットタイム
好きな音楽をかけたり、深呼吸をするなどリラックスタイムを5分間継続してください。気持ちがとても安定するはずです。 - 1行日記
寝る前に「今日良かったこと」を1行だけ書いてみましょう。読み返すと、とても前向きな気持ちになれますよ。 - 第三者への相談
月1回、市の相談窓口やオンラインカウンセリングを試してみましょう。介護は抱え込んではダメです。介護については、やはり介護のプロを頼るのが一番なのです。
まとめ
- 定期的な振り返りを続ける
(出来る範囲で良いですが)毎週末に10分だけ振り返り会を実施し、状況の変化に合わせて調整をしてみましょう。LINEでのやり取りなどでも良いでしょう。 - 取り組み内容の見直し
みなさんの役割は定期的に見直しをして、新たな役割分担やアイデアを取り入れてみましょう。 - 介護サービスの活用
それでもみなさんが負担を感じる場合、ショートステイやデイサービスを組み合わせると、物理的負担が軽減できるはずです。介護は抱え込むのではなく、介護のプロを頼ると良いでしょう。ね。」

くまさん、家族会議の提案が本当に助かりました。みんなの気持ちを共有できたことが大きいです。

私も無理しすぎず、家族として続けていけそうです。

家族介護は本当に大変です。篠原さんのご家族は、みなさんが前向きにお母さまの介護について考えてくれるのでとても良い事例ですね。それでも介護はご家族だけで抱え込むと、いつか負担によってまわりのご家族にも影響がしかねません。そのようなときは介護のプロを頼ってみるとよいでしょう。
【著者情報】くまさん(介護と転職のアドバイザー)
年齢 | 在籍期間 | 在籍企業 |
---|---|---|
22~34歳 | 10年 | 金融機関勤務(大手銀行、米系証券会社) |
35~45歳 | 10年 | 大手転職エージェント |
45~50歳 | 5年 | 介護系ベンチャー企業 |
50歳~ | 5年以上 | 独立して介護と仕事のコンサルタント |
年 | 主な出来事 | |
---|---|---|
1970年 | 0歳 | 神奈川県横浜市に生まれる。 |
1992年 | 22歳 | 大学卒業後、みずほ銀行に入行(法人営業担当)。 |
2000年 | 30歳 | 米系証券会社に転職し、主に債券を扱うトレーダーを行う。 |
2005年 | 35歳 | 大手転職エージェントにキャリアチェンジ(ミドル層の転職支援)。広告やプロモーション全部門の責任者となる。またキャリアアドバイザーとしての経験もあり、求職者のお気持ちに寄り添うカウンセリングを得意とした。 |
2015年 | 45歳 | IPO直前の介護ベンチャー企業に転職し、介護事業者の収益改善コンサルティングに従事。特養、訪問介護、通所介護、または有料老人ホームの経営や人事コンサルタント業務を行う。また、一般ユーザー向けには介護の相談窓口サービスを提供し、とくに仕事と介護の両立に悩む会社員をサポートしてきた。 |
2020年 | 50歳 | 独立し「Dr.介護と仕事のアドバイザー」として企業制度設計や講演、情報発信を開始。その流れで本ブログを執筆中。現在に至る。 |
No. | 得意分野 |
---|---|
1 | 介護と仕事の両立支援(一般ユーザー向け) |
2 | ミドル・シニア層(30代~50代)のキャリア再構築・転職支援(一般ユーザー向け) |
3 | 介護人材の採用・定着(介護事業者向け) |
4 | 介護事業者の経営支援(介護事業者向け) |
5 | ダイバーシティ経営(介護離職防止)(介護事業者向け) |
6 | 施設(老人ホーム)選びのアドバイス(一般ユーザー向け) |
7 | 50代以降のキャリア再デザイン(一般ユーザー向け) |
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兄弟姉妹間で介護日数に大きな差が生まれるのはよくあるケースです。なかなか公平に分担するのは難しいかもしれません。たとえば、ある市の調査では、姉妹でそれぞれが週3日と週6日という極端な差がある家庭が全体の約30%を占めているのです。負担の不公平が原因で家族内のすれ違いやストレス、さらには介護離職につながるといったケースもあるのです。