
老人ホームにかかる費用について解説します。入居するとき、入居したあとにどれくらい費用がかかるのか、たとえば10年住むとどれくらい総費用がかかるのか、またどんなことに費用が発生するのか、等を解説しますね!
東京都内在住の50代管理職Aさんは、妻と高校生の息子の3人暮らし。千葉県房総半島でひとりで暮らす80代の母をサポートするために、週末に車で2時間かけて通っています。しかし最近は体力的にも限界を感じ、施設への入居を検討し始めました。しかし、「老人ホームの費用はいくら必要?」「家計を圧迫せず安心できる施設はある?」と不安な思いもあるようです。
一方、介護離職をして在宅介護に専念してきたBさん(50代)は、親の認知症初期のケアに追われ、収入が不安定ゆえの経済的負担と介護疲れでいよいよ「リーズナブルな施設探し」を検討中です。預貯金の不安もあるなか、希望の施設が見つかるか不安な日々を過ごしています。
本記事では、老人ホームの月額相場から10年トータルコスト、公的補助までを初心者向けにやさしく解説します。また、Aさん・Bさんのケースを参考にしながら、みなさんが知りたいことを解消します。
老人ホームの費用構造と必要資金はいくら?
- 初期費用:敷金・入居一時金(0円~数千万円)
- 月額費用:施設による(次章を参照)
- 月額費用の内訳:
- 居住費(家賃相当額)
- 管理費
- 食費
- 介護サービス費(1割負担※)厚生労働省「介護サービス施設等調査」2023年度
- 必要資金シミュレーション例:
- 月額20万円×12ヶ月=240万円/年
- 10年利用で約2,400万円

次の章で、サービス種類別での月額費用をチェックしてみましょう。
種類別に見る費用相場──特養・有料老人ホーム・サ高住
施設種別 | 入居時一時金(万円) | 月額費用(万円) | 備考 |
---|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 0 | 約5~15 ※10万円以下もあり |
介護保険1割負担のため自己負担は低め |
介護付有料老人ホーム | 0~数千 | 15~35 平均約22.7 |
24時間介護スタッフ常駐。終身利用も可能 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千 | 12~30 平均112,410円 |
必要分の介護サービス利用。居住費は有料ホームより安価 |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 0~数千 | 16.5 | 賃貸住宅扱いで安否確認・生活相談付き |
参照サイト;ORIXBANK「介護施設の費用相場」 ベネッセ「介護付有料老人ホーム」

老人ホームは、その施設の内容によって初期費用が大きく違います。高級老人ホームと言われているところは、数百~数千万円かかることがあります。初期費用を抑えるのがひとつのポイントになりますので、いろいろな施設を比較してみてください。
ちなみにBさんがおっしゃる「グループホーム」とは、認知症のある高齢者が少人数で共同生活を送る介護施設で、少人数ユニットで生活します。雰囲気は、家庭的で自立した日常生活を送れるように支援することを目的としています。
個室と多床室の月額費用比較
居室タイプ | 月額費用の目安(万円) | ポイント |
---|---|---|
個室 | 18~25 | プライバシー重視 |
2~4人部屋(多床室) | 10~15 | 費用を抑えたい方向け |
参照サイト:ORIXBANK「介護施設の費用相場」
10年トータルコストのシミュレーション
まずはAさんとBさんの場合でかんたんなシミュレーションをしてみます。Aさんは毎月20万円ほど、Aさんの親の年金とAさんからの支援でなんとか毎月の支払は可能かもしれません。しかし長い目で見て、支払いが可能かどうかのシミュレーションをしてください。

ご注意いただきたいのは、Aさんは今53歳ですが、やがて定年(または役職定年)を迎えることで収入が大幅減になる可能性があります。また月額費用は終始一定ということはなく、物価の変動により値上がりすることもあるので注意が必要です。
ケース | 月額費用 | 年額 | 10年トータル |
---|---|---|---|
Aさん | 20万円 | 240万円 | 2,400万円 |
Bさん | 15万円 | 180万円 | 1,800万円 |
※インフレ率2%で考慮すると約+500〜800万円の余裕資金が必要です 総務省「家計調査年報」2023年版

老人ホームに入居すると、やはり一定の金額がかかってきます。そして、年金だけでは入居を続けられない人もいます。親の年金額と預貯金からどのような施設を選んだらよいのかを試算しておくことが重要です。
介護保険サービスの自己負担軽減
入居を検討すると同時に覚えておいてほしいのが、自己負担が軽減される場合。入居前・入居後にまず使えるのが「介護保険サービス」です。要介護認定を受けると、介護付き施設での介護サービス費用が原則1割(高所得者は2~3割)に抑えられます。
- 施設で受けた介護(排泄・入浴・食事介助など)の費用が保険適用
- 要介護度に応じて利用限度額が決まり、その範囲内でサービス利用

介護保険を使うと、専門スタッフによる安心の介護が自己負担1割で受けられます。まずはお住まいの市区町村で要介護認定の申請を!
介護保険利用者負担限度額認定制度
低所得の方には、介護保険自己負担額にも上限があります。市区町村で「負担限度額認定証」を申請すると、ひと月の自己負担が下表の額まで軽減されます。
世帯の課税状況 | 上限額(1ヶ月) |
---|---|
非課税世帯 | 24,600円以内 |
課税所得380万円未満 | 44,400円以内 |
課税所得380~690万円 | 93,000円以内 |
課税所得690万円以上 | 140,100円以内 |

ここで次に、ご自宅で介護をしようとする人に向けての補助について、簡単に紹介してみます。
住宅改修・福祉用具購入の補助
居室内の手すり設置や段差解消、車椅子や介護ベッドなどの福祉用具購入・レンタル費用にも補助があります。
- 改修工事(手すり・段差解消など):20万円まで(自己負担1~2割)
- 福祉用具購入(ポータブルトイレ等):10万円まで補助
- 福祉用具レンタル:月額自己負担上限あり
施設入居前にお部屋の改修が必要な場合や、入居後に快適さをアップしたい時にも使えます。担当ケアマネに相談してみましょう!
生活支援サービスの助成
多くの自治体では、買い物や掃除など生活支援サービス費用の一部を補助しています。
- 買い物代行・清掃など:利用料の2分の1を補助(上限月1万円程度)
- 通院・外出通費補助

ちょっとした家事支援が助かりますよね。自分で動き回るのが難しくなったら、早めにご利用の検討を!
その他の自治体独自制度
市区町村によっては、
- 介護付き住宅家賃補助
- 入居一時金の減免制度
- 食費・光熱費の一部補助
など、独自の助成制度を設けている場合があります。

“同じ市区町村”でも制度が違うので、お住まいの役所ホームページや地域包括支援センターで必ず最新情報をチェックしてくださいね!そして困ったときは遠慮なくケアマネジャーや地域包括支援センターへご相談を!
予算別おすすめ施設の選び方
予算(月額) | おすすめ施設 | ポイント |
---|---|---|
〜15万円 | 特養・多床室 | 介護保険適用で自己負担を最小限に |
15〜25万円 | 住宅型有料・混合型 | プライバシーとコストのバランスが良好 |
25万円〜 | 介護付有料・個室 | 安心・快適な生活環境を重視 |
- スタッフ対応の丁寧さ
- 食事やレクリエーション内容
- 緊急時の対応体制
まとめと次のステップ
- 費用シミュレーションをまず行う
- 公的制度の確認:市区町村窓口へ
- 見学予約:チェックリストを活用
- 家族会議:最終決定前にしっかり相談
お住まいの自治体や介護支援専門員(ケアマネジャー)とも連携し、一歩ずつ進めていきましょう。

最初は大変に感じるかもしれませんが、一つずつクリアすれば必ず光が見えてきます。何かあればいつでもご相談くださいね!