親の介護が必要になった際、真っ先に頭をよぎるのが「介護サービス」の活用です。
特に働きながら介護をするビジネスケアラーや介護離職を検討している人にとって、適切な介護サービスの選択は生活を大きく左右します。

こんにちは、介護と転職のアドバイザー「くま」です。本記事では、とにかくわかりづらい介護サービスの種類や具体的な内容、利用方法、さらに信頼できる施設の探し方について解説します。
介護サービスとは?概要と仕組み
介護サービスとは、介護保険を利用して受けられるサービスの総称です。要支援1~2、または要介護1~5に認定されると、所得に応じて費用の1~3割を自己負担する形で利用できます。
①介護給付サービス:要介護1~5の認定を受けた人向け。
②予防給付サービス:要支援1~2の認定を受けた人向け。
介護サービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。これは、市区町村の窓口で申請し、調査員の訪問調査や主治医の意見書をもとに判定されます。
要介護度別の介護サービスの種類

くまさん、そろそろ親の介護を真剣に考えないといけないんですが、介護サービスってどんな種類があるんでしょうか?まずは全体像を教えてください。

もちろんです。介護サービスは大きく分けて5つのタイプがあります。今日は順番にご説明しますね。
訪問介護サービス

まずは訪問型介護サービスです。親御さんのご自宅に介護スタッフが来てくれるサービスです。サービスは主に3種類あります。
①訪問介護(ホームヘルプ):食事や入浴、排泄介助など日常生活のお手伝い。
②訪問看護:看護師さんが医療処置や健康管理を行います。
③訪問リハビリテーション:理学療法士などが、身体機能維持・回復のためのトレーニングを実施します。」

外出が難しくなってきている私の親には助かりそうなサービスです。わざわざ自宅に来てくれる介護サービスということですね。
通所介護サービス

次に紹介するのが通所介護サービスです。親御さんが日帰りで施設に通い、まとまった時間ケアを受けるものですね。代表的なものが以下のようなものになります。
①デイサービス(通所介護):食事・入浴、レクリエーション、機能訓練などをまとめて受けられます。
②デイケア(通所リハビリ):医療機関併設のリハビリテーション中心サービス。リハビリの専門家と設備が充実しています。」

なるほど、いろんな方が集まる通いの日帰りの介護サービスということですね。社会的に交流ができるのも魅力かもしれません。
短期滞在型サービス

内容はよく分からないのですが、ショートステイっていうのもありますよね。

はい、ショートステイ(短期入所生活介護)というのは、ご家族が急用や旅行で介護ができない間、数日から数週間、施設に泊まり込みでサポートを受けられるものです。旅行だけでなく、ご家族のひとときの休息や緊急時の受け皿としても活用できますよ。
居住型サービス

施設に入居する居住型サービスにはいくつか種類がありますので混乱しがちです。以下の4つを覚えておくとよいでしょう。
①特別養護老人ホーム(特養):公的施設で費用が比較的抑えめ。要介護3以上が対象です。
②グループホーム:認知症ケアに特化した小規模(9~18人程度)の共同住宅。家庭的な雰囲気が特徴です。
③サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):自立~要支援の方が対象。安否確認や生活相談が付帯し、自室で自立生活がメイン。
④有料老人ホーム:介護(介護付)、住宅(住宅型)、健康(健康型)の3タイプ。設備やサービス内容に応じて費用が変わります。
その他の支援サービス

ここまででもけっこう種類がありますね、まだあるんですか?

はい、その他サービスとして次のようなものがあります。
①福祉用具貸与・販売:手すりや車いす、介護ベッドなどをご自宅に設置。
②住宅改修:段差解消や手すり取り付けなど、安全な住環境づくり。
③地域支援事業:ボランティアによる見守りや学習支援、地域の自主グループ活動などがあります。

まとめると、自宅で受けるサービス、自宅から通うサービス、一時的に入居できる短期滞在、そして常時入居できる施設と、いろいろな選択肢があるんですね。

その通りです。まずは親御さんの身体状態やご家族の状況を整理して、どのサービスから試すかを決めると良いですよ。次回は、各サービスの利用費用や手続きの流れについて詳しくお話ししましょうね。
お分かりの通り、とにかく介護サービスは種類が多くて、内容の違いも分かりづらいです。まずはいろいろなサービスがあることだけ知っておきましょう。
介護サービスを利用するまでの流れ
要介護認定の申請

まず“要介護認定”って何ですか?どうやって申請するんでしょう?

要介護認定は、介護保険サービスを使うために必要な認定です。お住まいの市区町村の窓口か地域包括支援センターで申請します。
申請書と医師の意見書を提出すると、訪問調査と主治医意見書をもとに担当者が認定を行い、要支援1~要介護5のいずれかに判定されます。結果は1ヵ月ほどで通知されますよ
ケアプラン(介護サービス計画)の作成

次はケアプランの作成です。ケアプランは、ケアマネジャー(介護支援専門員)と一緒に作ります。
ケアマネジャーは市区町村や民間の居宅介護支援事業所に所属していて、親御さんとの面談を通じて生活状況や家族の希望をヒアリング。週何回デイサービスを利用するか、訪問介護をどう組み合わせるかなどを計画書にまとめます。通常、要介護認定の通知から1~2週間でプランが完成します。
サービス事業者の選定・契約

プランができたら、どの事業者を使うか決めて契約するんですよね?

その通りです。ケアマネからデイサービスや訪問介護などの候補事業者を提案されますので、まずは施設や事業所を見学・体験利用して雰囲気を確認しましょう。気に入った事業者があれば、契約書にサインして利用開始日を決定します。契約手続きはだいたい1~2日で完了しますよ。

自分で探すことはできないのですか?

いえ、そんなことはありません。老人ホームを詳しく調べたいときなどは、民間の老人ホーム検索サイトの「みんなの介護」や「LIFULL介護」に登録して希望の施設を探すこともできます。エリアや月額にかかる費用などで検索することができます。
利用開始前の準備

いよいよ利用開始ですね。何を準備すればいいでしょう?
ケアマネから『持ち物リスト』をもらいましょう。一般的には、介護保険証、印鑑、着替え、タオル、常用薬、おやつ代などです。また、送迎ルートや緊急連絡先を事前に確認し、連絡用のメモを用意しておくと安心です。

ここで補足としてもう一度、介護サービスを利用するまでの基本的な流れを大きく5つのステップに分けて説明しますね。
要介護認定の申請
窓口に相談・申請書提出
・申請書に本人・家族の情報、病歴や日常生活での困りごとを記入します。
訪問調査
主治医意見書の提出
・かかりつけ医に、日常生活での状況や疾病の状態をまとめてもらい、市区町村に提出します(原則、申請者が医療機関に依頼)。
審査・認定
認定結果の通知
ケアプラン(介護サービス計画)の作成
ケアマネジャー(介護支援専門員)の選定
面談とニーズ把握
プラン提案
ケアプランの確定
サービス事業者の選定・契約
事業者リストの入手
見学・説明受講
利用申込・契約
利用開始前の準備
サービス担当者会議
事前訪問・トライアル
福祉用具・住宅改修の手配
介護サービスの利用開始
定期的なサービス提供
モニタリング・プランの見直し
要介護度の更新手続き
手順のまとめ
・ケアマネジャーとの対話:要望や生活リズムを正確に伝え、納得のいくプランを作る。
・定期的な見直し:サービス利用中もモニタリングを受け、最適な支援を継続的に受ける。
介護保険とは?概要と仕組み

ここで介護サービスを受ける前に、介護保険の仕組みについても勉強しておきましょう。
介護保険は、日本が2000年に導入した社会保険制度で、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みです。40歳以上の人が保険料を負担し、介護が必要になった際に介護サービスを利用できます。
被保険者の分類
被保険者は年齢によって以下の2つに分けられます:
・第1号被保険者(65歳以上):原因を問わず要介護状態になった場合に利用可能。
・第2号被保険者(40~64歳):特定疾病(例:がん、糖尿病性腎症など)が原因で要介護状態になった場合に利用可能。
介護保険の利用方法
介護保険を利用するためには以下のステップを踏む必要があります:
1. 要介護認定の申請
・親の住所地の市区町村で要介護認定を申請します。必要書類は以下の通り:
・65歳以上:介護保険被保険者証
・40~64歳:医療保険証
・主治医の意見書(事前準備が必要)
2. 認定調査
・認定調査員が本人の生活状況を確認します。家族が同席して状況を補足説明すると、適切な結果が得られやすくなります。
3. ケアプランの作成
・要介護度が認定されたら、ケアマネジャーと相談し、ケアプランを作成します。利用したいサービスや日常の困りごとを具体的に伝えることがポイントです。
4. サービス利用開始
・ケアプランに基づいて介護サービスの利用を開始します。事業者と契約を結び、支援が始まります。
介護保険で利用できる主なサービス
介護保険で利用できるサービスは多岐にわたりますのであらためてここで紹介します。以下は代表的なサービスの一覧です。
居宅介護支援
・内容:ケアプランの作成、申請代行
・担当:ケアマネジャー
訪問サービス
・訪問介護:掃除や調理、入浴支援
・訪問看護:健康管理や医療処置
・訪問リハビリテーション:身体機能を維持するためのトレーニング
通所サービス
・デイサービス:日帰りで食事や入浴、機能訓練を受ける。
・通所リハビリテーション:リハビリを中心とした施設利用。
短期入所サービス
・短期入所生活介護:家族が一時的に休息を取れるサービス。
・短期入所療養介護:医療的支援が必要な高齢者向けの施設。
施設入所
・特別養護老人ホーム:自宅での生活が困難な高齢者のための介護施設。
福祉用具のレンタル・購入
・手すりや歩行器のレンタル、入浴補助具などの購入が可能。
小規模多機能型居宅介護
・訪問、通所、宿泊を柔軟に組み合わせたサービス。
介護保険のメリットと注意点
メリット
・費用の軽減:介護保険が適用されるため、費用の1~3割の自己負担で利用可能。
・豊富な選択肢:多様なサービスから選択可能で、個々のニーズに応じた利用ができる。
・地域密着型サポート:市区町村単位で提供されるため、地域特性に応じた支援を受けられる。
注意点
・費用負担:要介護度やサービス内容によって自己負担額が異なる。
・手続きの煩雑さ:認定申請から利用開始までに時間がかかる。
・サービスの制限:介護保険が適用されないサービスもある。
介護保険を上手に活用するためのポイント
早めの相談と準備
・介護が必要になる兆候が現れたら、早めに地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。
サービスの併用
・デイサービスや訪問介護を組み合わせることで、介護者の負担を軽減できます。
自分の健康を守る
・介護者自身の健康維持も重要です。定期的にリフレッシュできる環境を整えましょう。
介護保険は、高齢者の生活を支える重要な制度です。親や家族が介護を必要とする状況になったとき、早めの情報収集と準備が鍵となります。この記事を参考に、介護保険制度を上手に活用し、仕事と介護を両立しながら安心した生活を送れる環境を整えましょう。
信頼できる介護サービスの探し方
ケアマネジャーへの相談
・介護支援専門員(ケアマネジャー)は地域の事業所情報に精通しています。要介護度やご家族のライフスタイルに合った候補を複数挙げてもらい、比較検討しましょう。
事業所の見学・面談
・実際に施設や訪問スタッフを見て、雰囲気や人柄を確かめます。事前に見学予約し、サービス内容・スケジュール・費用の説明を受けた上で、疑問点はその場で解消しましょう。
利用者・家族の口コミ・評判チェック
・インターネットの口コミサイトや地域包括支援センターに寄せられる声を参考に、スタッフ対応やトラブル対応の実績を確認。同じ市区町村内で利用した知人・友人の生の声も貴重です。
スタッフの資格・研修状況の確認
・介護福祉士、看護師、社会福祉士など有資格者の在籍比率や、定期的な研修実施状況をチェック。スタッフの定着率(勤続年数)が高い事業所は、サービスの質が安定しやすい傾向があります。
費用の透明性と契約条件
・介護保険適用後の自己負担額(原則1割または2割・3割)を明示しているか。
追加サービスの料金表やキャンセル料、契約期間・解約条件などがわかりやすく提示されているか確認しましょう。
トライアル利用・契約前確認
・短期トライアル(1日体験、訪問介護のお試し利用など)が可能かどうかを確認。体験後にフィードバックを得て、家族も交えた最終判断を行います。
継続的な評価・見直し体制
・ケアマネジャーや事業所と定期的な「サービス担当者会議」を実施できるか。利用開始後も、本人・家族の満足度や身体状況の変化に応じたプラン見直しのサポートが整っているか確認しましょう。

介護サービスには、訪問介護や通所サービス、施設サービスなど多岐にわたる種類があります。働きながら介護をする人や介護離職を考えている人は、早めに要介護認定を受け、適切なサービスを利用することが重要です。また、信頼できる情報源を活用し、自分や家族に合った介護方法を選びましょう。
まとめ
介護サービスには、訪問介護や通所サービス、施設サービスなど多岐にわたる種類があります。
働きながら介護をする人や介護離職を考えている人は、早めに要介護認定を受け、適切なサービスを利用することが重要です。また、信頼できる情報源を活用し、自分や家族に合った介護方法を選びましょう。
関連リンク
▽介護サービスについて理解する
▽介護について相談したい
▽仕事と介護の両立について知りたい